オオモクメシャチホコの幼虫は、刺激されると尻の角から、ミミズのような不気味な物体を出すことで知られています。
この角は、尾脚と呼ばれるイモムシの一番後ろにある足が変化したものらしいです。シャチホコ蛾の仲間には、尾脚が角のように変化したものが多くいますが、そこから手品のようにミミズを出すという技を持っているのは、モクメシャチホコの仲間だけかもしれません(他にもあったら失礼)。
頭の後ろから肉角を出すアゲハ蝶の仲間の幼虫、尻の角からタンポポの種のような物を出すウラギンシジミの幼虫と並んで、モクメシャチホコの仲間の幼虫は、不思議なイモムシです。
モクメシャチホコの仲間のもう一つの特徴は、木の幹に張り付いたドーム型のカチカチの繭です。羽化した成虫が脱出した後の、大きな穴の開いた繭は目立つので、多くの人が目にしたことがあるはず。
あのカチカチの繭から、柔らかい蛾がどうやって脱出できるのか、不思議ですね。脱出する際の穴、脱出の際に取り除かれる蓋のような部分を見ると、容易に蓋を開けられる仕組みがあるように思えます。イラガの繭からイラガ成虫が出てくるのと同じ感じなのかもしれません。
モクメシャチホコの名は、成虫の翅の模様が木目調だからのようです。尻の角からミミズを出す幼虫、岩のようにカチカチの繭、素敵な木目調の成虫と、オオモクメシャチホコは成長過程ごとに楽しみの多い蛾ですね。今年は1匹だけしか見つけられませんでしたが、来年はポプラ、ヤナギ、ヤマナラシなどの木でもっと丹念に探そうと思います。