虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

サイコ・ホラー映画「羊たちの沈黙」の陰の主役、ドクロ蛾ことメンガタスズメ。幼虫はなかなかの美貌

 ジョディー・フォスター主演のサイコ・ホラー映画「羊たちの沈黙」と言えば、虫好きにとってはドクロ蛾ことメンガタスズメですね。映画のポスターでも、ジョディ―・フォスターと一緒に主役を務めていました。

 成虫の背中のドクロ模様のせいで、不幸や死の象徴とか言われることもある、超嫌われ者のメンガタスズメですが、幼虫はなかなかに美しいイモムシです。先日東京近郊の公園のクサギで久々に見つけました。

巨大で美しいメンガタスズメの仲間(たぶんクロメンガタスズメ)の幼虫。

小さめの幼虫もかわいい。

 メンガタスズメの幼虫は、トマト、ナスなどをムシャムシャ食べる害虫ですが、クサギも食べるんですね。トマトだと飼うのが面倒(ホームセンターで苗を買うとかしないといけない)ですが、クサギならどこにでもある雑木なので、餌には困りません。

 「羊たちの沈黙」では、猟奇的な連続殺人犯が、メンガタスズメを育てていました。被害者の喉にこの蛾の蛹が突っ込まれているのは不気味でした。殺人犯とジョディー・フォスターの対決シーンでは、薄暗い部屋の中に蛾がたくさん飛んでいましたね。

羊たちの沈黙」で遺体の喉に突っ込まれていたのはこれ。

 

 幼虫が害虫で、成虫が不幸の象徴というメンガタスズメの印象は、もともと良くなかったですが、この映画でますます悪くなりました。しかし、イモムシ好きの間では、メンガタの幼虫は結構人気があります。

 メンガタスズメは米国ではホラー映画の陰の主役ですが、日本ではイモムシ女子のアイドルとして脚光を浴びてほしいものです。

以前マレーシアで撮影したクロメンガタスズメの成虫。背中のドクロ模様が特徴。

 

食べて美味しいイモムシの話。桜の香りが食欲を誘う?サクラケムシ=モンクロシャチホコ幼虫

 今回は食べて美味しく、香ばしいイモムシの話。美人女優の井上咲楽(いのうえさくら)さんも、桜の香りがして「美味しい」と太鼓判を押すサクラケムシ(モンクロシャチホコの幼虫)です。

 とは言え、やはり最初から毛虫の画像では、嫌悪感を抱く人も多いので、まずは成虫(蛾なのでこれも多少の嫌悪感があるかも)の画像から。

モンクロシャチホコの成虫。翅を開くとなかなか格好いい。

翅をたたむと鳥の糞擬態になると言われるモンクロシャチホコ成虫。

 成虫は翅をたたんで縮こまると、鳥の糞擬態になると言われていますが、翅を広げるとなかなか格好いい蛾でもあります。(以下に毛虫の写真が出てくるので、苦手な人は先に進まない方がいいかも)。

 8月末に代々木公園に行ってみると、桜の木が軒並み丸裸になっていました。そして大量のサクラケムシが、蛹化準備のため幹を下って、地面をうろうろ。わずかに残った葉をむさぼり食う姿も見られました。

わずかに残った桜の葉をむさぼり食うサクラケムシ。

こちらはかなり以前の日比谷公園での写真。

このくらいの小さい幼虫の方が、試食の抵抗感が少ないかも。

サクラケムシの食害で丸裸になった代々木公園の桜の木。

 公園での動植物の採集は原則禁止ですが、サクラケムシは公園にとって迷惑な害虫なので、少しだけ酒のつまみ用に持ち帰っても、非難されることはないかも(どうせ駆除されるし、カラスにばくばく食べられていたし)。

 昆虫記者なら当然、サクラケムシを食べたことがあるだろう思われがちですが、実は勇気が出せず、まだ食べたことはありません(糞のお茶は飲んだことがあります)。なので、今回サクラケムシを試食するのは、カラスだけということになりました。

サクラケムシを食べまくるカラス。美味しそうですね。


 それでもサクラケムシを食べたいという人は、ゆでる、炒めるなど火を通して、衛生面に十分注意して食べて下さい(不測の事態が発生しても昆虫記者は責任を取りません)。

 食べるのにはさすがに抵抗があるという人(一般市民の大半)には、飼育してみるという選択肢もあります。飼育ケースの中が桜の爽やかな香り(幼虫が葉をかじる際の香りや幼虫の糞からの香りと思われます)に満たされるのを楽しむことができます。

久々に初恋の人と再会した気分、オオキンカメムシとトゲナナフシ

 昨日は横浜市の公園で、久々に初恋の人と再会したような気分になりました。なーんて言っても、全然ロマンチックな話ではありません。

 何年ぶりかで、オオキンカメムシとトゲナナフシに出会えたというだけです。虫好きでないと、この胸のときめきは分からないでしょう(と言うか、分かりたくもないでしょう)。

 まずはオオキンカメムシ。アブラギリの実が既に落下し始めていたので、越冬地への移動の前にアブラギリの林でオオキンカメムシを見られるのも、あとわずかの期間かもしれません。この日は何とか5~6匹を目にすることができました。

 以前と比べるとだいぶ数が減っている印象ですが、それでも恋人に振られなくてよかったです。

アブラギリの林で久々にオオキンカメムシと再会

オオキンカメムシは日本最大級の重量感

 そしてトゲナナフシ。こちらはオオキンカメムシより、ずっと、ずっと久しぶりの再会でした。ほぼ確実にメス(単為生殖が基本のためオスはめったにいません)なので、まさに初恋の人(虫)との再会ですね。でも見た目は、初恋の可憐な少女からは程遠いです。

 トゲナナフシは基本的に夜行性なので、昼間は物陰に隠れていることが多いですね。なので今回は、徹底的に道端の側溝を探索(超地道な作業です)しました。そして苦労のかいあって、ついにトゲナナフシを発見。でも見つけたのは1匹だけなので、側溝で探すのは非常に効率が悪いです。皆様にはお勧めできません(丸一日側溝のゴミを眺めて収穫ゼロという悲惨な状況になりかねません)。

側溝にいたトゲナナフシ

 近くに普通のナナフシもいました。

こちらは普通のナナフシ。そろそろ最終盤。

 ほかにキレイどころでは、ナミハンミョウ、ポピュラーな大物ではカブトムシもいました。最終盤のアブラゼミは、あちこちでカマキリやスズメバチの餌食になっていました。

ナミハンミョウ。枝被りの最悪の構図になってしまいました。

クヌギの樹液にはカブトムシ。これが今年の見納めか。

カマキリに捕食されるアブラゼミ。頭部を失いながらも、まだ必死にもがいていました。残虐シーンですね。

 残虐シーンで終わるのは良くないので、締めくくりは夏の花。サルスベリセンニンソウです。

満開のサルスベリの並木

センニンソウの花。花が枯れると仙人のようなヒゲだらけの種ができる。

 

タマムシ探しに絶好のシーズン到来。でも死ぬほど暑い。

 8月の猛暑真っ盛りの中、川崎市の生田緑地に繰り出しました。「死んでも知らんぞー」というぐらいの、とんでもない暑さですが、この時期は、伐採木に産卵にやってくるタマムシ(ヤマトタマムシ)を撮影するのに絶好の季節です。

 週末の虫探しで、たいてい1日に1~2匹はタマムシに出会えるのが、この猛暑の季節。熱中症にならないよう、氷結させたスポーツ飲料を持って、タマムシ探しに出かけましょう。

 今回も運よく、熱中症で倒れることなく、数匹のタマムシに出会えました。

 まずはちょっと「やらせ」で、食樹のエノキにとまらせたタマムシです。裏側までとんでもなくきれい、と言うか、たぶん裏側の方がきれい。

裏側から撮ったタマムシオパールのような多彩色の輝きは、たぶん表側よりきれい。

もちろん、タマムシの表側も、定番の美しさ。

このつぶらな瞳もタマムシの魅力の一つ。

 そして、伐採木に産卵中のタマムシです。伐採木が積んである場所の場合、新しめの材の木口面の裂け目に産卵することが多いですね。木口面を中心に探しましょう。

伐採木の割れ目に産卵するタマムシ。新しめの木が好み。木口面を見て回るのがタマムシ探しのコツ。

伐採木の上を歩き回るタマムシ

 近くには、外来のきれいなハゴロモ「ヘリチャハゴロモ」が山ほどいました。この周辺での生息密度は、今やアオバハゴロモとほぼ同等という感じです。

外来種のヘリチャハゴロモ。かなりの数が群れていた。

 

 植物で気になったのは「シキミ」。その実は、料理に使われるハッカクと良く似ていますが(近縁種のようです)、シキミは有毒。実の形が面白いので、つい摘み取りたくなりますが、子どもがいたずらで口に入れたりしないよう注意しましょう。

形が面白いシキミの実。有毒なので気を付けましょう。

シキミの茂みはこんな感じでした。

 

寺家ふるさと村・虫めぐり続編

 田園都市線青葉台駅周辺の虫めぐり、寺家ふるさと村の続きです。今回はイモムシ、毛虫編にしました。

 イモムシ、毛虫は、名前の分からないのが多くて困りますね。とりあえず、名前の分かるものだけにしました。

 まずはトビモンオオエダシャク。中齢の幼虫を2匹見つけました。この段階が猫耳が大きく目立って一番可愛いように思います。

トビモンオオエダシャク幼虫。猫耳が目立つ中齢の時期が見頃かも。

トビモンオオエダシャク幼虫。中齢だと体長に比して猫耳が大きい。

 次はまさにドクロ顔のヒロバトガリエダシャク幼虫。ドクロと思うと怖い顔ですが、ドクロを知らない鳥や蜂にとっては怖くも何ともないと思うので、威嚇効果はないでしょうね。

ドクロ顔のヒロバトガリエダシャク幼虫。

 ヒメシロモンドクガ幼虫は、いかにも毒がありそうな、けばけばしい装いですが、実際には毒はないと言われています。それでも怖いので、これまで飼育を避けてきましたが、秋には翅の退化したメスが出現するらしいので、今度見つけたら飼ってみようと思います。

毒々しいヒメシロモンドクガ幼虫。でも毒はないと言われている。

 あとはその他の雑多なイモムシなど。

たぶんオオシマカラスヨトウ幼虫。

クルミにいたのでクルミマルハバチ幼虫。こんなのがミズキにいたらアゲハモドキ

スイカズラで良く見かけるスイカズラクチブサガの特徴的な繭。

桑にはクワコの幼虫。

 

寺家ふるさと村=田園都市線「青葉台駅」周辺虫めぐり④

 今回は、昆虫写真家の森上信夫さんから紹介してもらった寺家ふるさと村です。青葉台駅から鴨志田団地行きのバスで10分ほど。終点の鴨志田団地からすぐのところにあります。

 今回紹介するのは4月末の事前調査の時の虫たちです。ここは虫の種類が豊富なので、続編(たぶん主にイモムシ)、森上さんとの虫撮り本番、追加取材などが続くと思います。なので、今回は小手調べ程度の感じで、ざっと出会った虫たちを紹介します。

まずは「きれいどころ」で、クビアカトラカミキリ

クビアカトラカミキリは花の蜜が好物のようで、花粉まみれのもいました。

これも「きれいどころ」のアカガネサルハムシ。ブドウ系の葉を食べますね。

以前紹介したラクダムシもこの時に見つけたものです。すぐ飛んでしまうので、プラケースに入れてから撮影。

クロハネシロヒゲナガ。髭(触角)が異様に長いオスは絵になりますね。

クルミの木には定番のカメノコテントウ。餌はクルミハムシの幼虫ですね。クルミハムシの成虫と蛹も幾つか見かけました。

桑の木には定番のハラグロオオテントウ。高いところにいたので、ボケボケの証拠写真ですいません。餌はクワキジラミの幼虫ですね。

フジにはフジハムシの幼虫。本番の際には成虫になっていました。

 このほか、背の低いクヌギにはコイチャコガネ、ヒメクロオトシブミ、ゴマダラオトシブミ、センニンソウにはオオアカマルノミハムシ、アマチャヅルにはアトボシハムシなど普通種の虫がたくさんいました。虫好きなら弁当持参で丸一日いても飽きないところです。

 入口の向かいの「四季の家」に詳しいマップがあるので、マップを入手してから散策に出るのもいいかも。

四季の家に置いてある無料のマップ。

 

昆虫写真家・森上信夫氏と歩く横浜市金沢自然公園

 前回に森上信夫さんの新著を紹介したついでと言っては何ですが、森上さんと4月下旬のご一緒した金沢自然公園での虫撮りの報告です。それにしても4月末からの積み残しって、怠慢すぎですね。

 金沢自然公園は結構起伏があるので、足腰に自身のない昆虫記者のような人々は、金沢動物園正面口の駐車場(公共交通なら金沢文庫駅西口5番乗り場からバスで15分ほどの市民の森入口下車)から頂上まで、無料のシャトルバスを使うのが便利。虫探しには歩いて登った方がいいのですが、帰りの下りだけ歩くのが得策ですね。

 キモカワ・イモムシの図鑑を出している井上けいこさんも一緒だったので、今回はイモムシ中心の虫旅となりました。

 まずはボロボロに食い荒らされたツゲの木を発見。ツゲノメイガのしわざですね。

ツゲノメイガの幼虫(左)と成虫

 終齢幼虫が山ほど、蛹も幾つか見つかりました。ノメイガの仲間の成虫は、どれも涼しげな姿で夏向きなのですが、大抵は葉裏に止まるので写真に撮るのは結構難しい。ならば幼虫や蛹を持ち帰って羽化させればいいのです。

ツゲノメイガの幼虫は、糸で葉をつづった中に隠れていることが多いようです。

透明な繭の中のツゲノメイガの蛹

羽化直前のツゲノメイガの蛹。なかなかに芸術的。

 アラカシの木には、ムラサキシジミの幼虫がどっさり。この幼虫は葉の一部を折りたたんだ中にいるので、この隠れ家の形態を知っていれば見つけるのは簡単です。

アラカシの葉を巻いたムラサキシジミ幼虫の隠れ家(上)とその中にいた幼虫

 サルトリイバラの葉裏には、ルリタテハの幼虫がびっしり。写真の範囲内だけでも7匹確認できます。

サルトリイバラの葉裏にはルリタテハのトゲだらけの幼虫。

 このほかにも色々なイモムシがいましたが、井上さんに尋ね忘れたので名前は不明です。

アラカシでムラサキシジミ幼虫を探す森上氏。後方は井上さん。

足腰に不安のある人には、無料のシャトルバスが便利。