虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

クズの花とウラギンシジミのヌンチャク攻撃

 クズの花って意外にきれいですね。フジの花の小型版のようで、紫色の花がたくさん連なっています。その花の中には、紫色の虫が隠れているのですが、こいつがなかなか見つからない。それはウラギンシジミの幼虫。
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 クズの花をかき分けている変な人がいれば、それはたぶん、ウラギンシジミの幼虫を探している心優しい虫好きです。おかしな人と恐がらずに、そっとしておいてあげましょう。

 葛西臨海公園で、なかなかきれいなクズの花を発見。花に丸い穴が開いていれば、ウラギンの食痕の可能性があります。

 ですが、見つけたのは、アリの集団に囲まれたルリシジミの幼虫でした。アリに攻撃されているわけではありません。ルリシジミは甘い蜜を出すので、アリに人気があるのです。
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 ところが、カメラの拡大画面を覗いているうちに、ルリシジミ幼虫の下方に、ウミウシのような小さな物体がうごめいているのに気付きました。極小サイズですが、これこそウラギンシジミの幼虫です。
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 持ち帰って4、5日もすると、かなり大きくなりました。花は栄養が豊富なのでしょう。成長が速いです。
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 ウラギンシジミの幼虫は、どっちが頭でどっちがお尻か、間違える人が多くいます。私も最初は間違えました。

 さあて、どっちがお尻でしょう。
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 蝶の幼虫は頭に角が生えているのが多いので誤解されるのですが、ウラギンシジミの幼虫は特別で、お尻に角があります。

 その角がまた奇妙。角の先には丸い穴が開いていて、アサリの出水管、入水管のように見えます。この角とその先の穴がくせものなのです。

 ちょっと気分を害すると、この穴から、カンフー映画のヌンチャクのようなものを出して振り回します。しかもヌンチャクの先端は毛の束のようになっていて、これを花火のようにパッと開くのです。
 敵に対する威嚇攻撃らしいですが、これには度肝を抜かれます。アゲハ類の臭い肉角よりも、はるかに手が込んでいて、奇想天外。ドッキリ度が高いです。

 プラケースが糞だらけになったので、掃除のため幼虫を移動させようとしたら、何が気に障ったのか、急にこのヌンチャクを振り回し始めたのです。慌ててカメラを持ってきて連写しました。
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 尻の角の先の穴から毛束を突き出して振り回す。こんな特技を身に付けたイモムシは、日本ではこいつだけです。クズの花をかき分ける変な人々は、これが見たくてウラギンシジミの尻を追いかけているのですね。