虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

ヤマトシジミを飼育したいという奇特なあなたへ

 熱帯の虫の紹介が続いた後は、日本の都会の街中で一番普通に見られるヤマトシジミです。天と地ほど落差が大きいですね。
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 あまりに普通で、あまりに地味で、あまりに小さい蝶なので、あらゆる人々に無視されている蝶です。なので、その幼虫を探した人とか、飼ってみたという人は極めて希少な人種と言えるでしょう。

 小学校の理科の蝶の観察と言えば、普通はモンシロチョウかアゲハですよね。なぜ、ご近所で一番多くて、食草のカタバミも調達しやすいヤマトシジミではないのか。

 それは卵が砂粒のように小さくて、とても見つけられないからです。でもその卵は拡大して見ると、中々の芸術作品です。茶色く着色したら月餅饅頭という感じの卵です。
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小さなカタバミの葉が巨大に見えるほど小さい卵です

 そして幼虫がまた見つけにくい。昼間は根元近くに隠れていることも多く、食痕を見つけて葉裏を探そうとすると、ポロリと落ちて行方不明になってしまいます。カタバミの草むらにしゃがみ込んで一匹探し出すのも一苦労です。
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            半透明の食痕の裏側に、幼虫らしきものが透けて見えます。

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       裏側にはやっぱり幼虫がいました。こういう若齢の幼虫はポロリと落ちることは少ないようです。

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             こんな感じの丸々太った幼虫は、すぐにポロリと落ちます。

 それでもどうしても、大量に飼育したいという人(そんな人は存在しない可能性もありますが)はどうしたらいいのか。

 確実なのは、草むらで交尾中のカップルにビニール袋をかぶせて拉致してくることです。どこかの国の悪党がやりそうな手段ですね。そしてカタバミの生えた植木鉢を配置したネット(100均で売っている折りたたみ洗濯物ネットが便利)の中に放します。数日後には、たくさんの卵がカタバミに産み付けられています。
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           こういう熱愛カップルは近づいても逃げないので、簡単に拉致できます。

 カップルを拉致するような悪人でない場合は、ヤマトシジミが飛び交っている近所の公園のカタバミを根ごとごっそり抜いてきて、プラケースに入れておくのもいいでしょう。根は濡れたティッシュで覆い、さらにラップで覆っておけば、カタバミが枯れることはありません。
 こんな雑な方法でも、かなりの確率で、ヤマトシジミの幼虫が発生してきます。

 でも断っておきますが、幼虫は全然見栄えがしません。苦労して飼育したのに、がっかりということになりかねないので注意しましょう。
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 蛹も特に見栄えはしません。
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 そして、もちろん、成虫も大して見栄えがしませんね。特に♀は羽の表が黒っぽくて地味。♂は良く見ると、結構きれいな蝶なのですが、特筆するほどではありません。


 ここまで書いても、なお飼ってみたいという人は、前記のような方法で、勝手にどうぞ。身近な自然の、小さな蝶の姿に安らぎを見いだすことができるあなたは幸せ者です。
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