5月上旬、大島小松川公園の展望の丘を囲む斜面には、アカツメクサの花がたくさん咲いていました。アカツメクサはシロツメクサを巨大にして、花をピンクに模様替えしたような植物です。草花を愛でる清らかな乙女たちの気を引こうと、昆虫記者もアカツメクサの花を愛でるふりをします。しかし、風体に問題があるので、乙女たちが振り返ることは決してありません。
それでも一応、アカツメクサにナミアゲハという、のどかな風景など撮ってみます。こんな風景を取るカメラマンのなんと素敵なことか。変わり者の乙女の一人ぐらい、振り向いてほしいものです。
でも狙いは、ナミアゲハなどではありません。誰一人見向きもしない、どうでもいい虫のアルファルファタコゾウムシです。名前がタコとは変ですね。その理由には後で触れるとして、まずはアカツメクサの葉の上で見つけたアルファルファタコゾウムシの芸術的な蛹室です。
なんと美しい。まるで高級中華料理の食材であるアマツバメの巣のようですね。などと言うと、ツバメの巣のスープを平気で注文できる大金持ちのようですが、実は昆虫記者はそんな高級中華は一度も食したことがありません。「そんなものおいしいはずがない」と決め付けてしまえば、羨ましさもなくなります。ちなみにアマツバメは、ツバメとはかなり違う種類の鳥らしいので、間違えて普通のツバメの巣を煮込んで食べたりしないよう気を付けましょう。
アマツバメの巣のような蛹室の中には、アルファルファタコゾウムシの蛹が入っています。しかしゾウムシ自体が小さいので、蛹室を見つけるのも一苦労。それでもどうしてもこの極小アマツバメの巣を見たいと言う人は、アカツメクサやどこにでもある雑草のカラスノエンドウに山ほどいるアルファルファタコゾウムシの幼虫をとってきて、飼えばいいのです(そんな物好きはどこにもおらん)。
幼虫はこんなです。3~5月ぐらいにカラスノエンドウの若葉が丸まっているあたりを見れば、街中の道端でも、いくらでも見つかります。
成虫はこんなです。全く見栄えのしない虫なので、わざわざ探そうとする人はまずいません。
そして、問題はタコの名の由来です。超有名な某昆虫サイトによれば、この仲間のゾウムシは奇形が発生する率が高く、脚が通常の6本ではなく、8本あるケースが散見されるのだそうです。そうです「タコの八ちゃん」です。某昆虫サイトには、実際に8本足のタコゾウムシの写真もありました。
8本脚のタコゾウムシ、是非見つけてみたい…なんて思う人はまずいないでしょうが、昆虫記者はタコ八ゾウムシに憧れます。でもこれまで何十匹も見てきて、そんなのはいなかったので、恐らくは、千に一つ、万に一つなのでしょう。幼虫を山ほど捕まえてきて育てれば、タコ八に出会えるかもなんて、考えたりしますが、1000匹育てても会えなかったら、ただのアホです。1000匹の成虫の足の数を確認するだけでも、大変な手間ですから。