虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑲イベント自粛ムードを笑い飛ばすサンタのような白翁鳥

 新型コロナウイルスの拡散で、出不精になっている昨今。悲しみにくれながら過去の旅行の思い出に浸るしかないですね。今回はサンタのような白い髭、白髪のハクオウチョウ(白翁鳥)をご紹介します。

 

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白髪頭の笑うツグミ、ハクオウチョウ(白翁鳥)

 英語名のWhite-crested Laughing Thrushは、白髪頭の笑いツグミといった意味です。白髪頭で白髭を蓄えて、「ウォッホッホッホ」と朗らかに笑う人物と言えば、思い起こすのはサンタクロース。本当はハクオウチョウの笑い声は、サンタよりずっと甲高いのですが、そこは寛大な心で見逃してもらうことにしましょう。

 

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立派な白いトサカに、白い髭。ハクオウチョウは鳥類界のサンタですね。

 シンガポール旅もいよいよ最終日。午後の便で日本に帰国というその日に、こんな陽気な鳥類界のサンタに見送ってもらえるなんて、うれしいじゃないですか。他に見送ってくれる美しい愛人とか、熱い友情を誓い合った親友とかがいないのは悲しいですが、そこはウォッホッホと笑い飛ばすことにします

 

ユーチューブにアップされていた笑い声を聞きたい人は、これがいいかもhttps://www.youtube.com/watch?v=fvkqojiDwuU

 

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ハクオウチョウの笑い声は、ちょっとワライカセミに似ている

 場所は泊ったホテルの裏庭のようなサザンリッジの森。蛇のようにウネウネと波打つように見えるヘンダーソン・ウェーブ陸橋の入口付近です。6~7羽ぐらいいたので、このあたりがたまり場かもしれません。人懐っこい鳥なので、撮影は苦労なし。

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躍動感あるヘンダーソン・ウェーブ陸橋

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近くに会った注意書き。サルに餌をやると最高5000シンガポールドルの罰金とか。40万円近い額ですよ。驚きですね。

 ただ、シンガポール新型コロナウイルス感染者が100人以上出ています。シンガポールはまた、感染拡大防止のため、中国、イラン、イタリア、韓国からの入国を厳しく規制しており、日本も近く対象になるでしょうから、しばらくは旅行に行けないかもしれませんね。悲しい。

 「シンガポール昆虫ガイド」なのに虫が出てこないぞー、とお怒りの方もいるかもしれませんが、最終日には結構、かなり、相当に見ごたえのあるイモムシにも遭遇していますので、暇をみて次回ご報告いたします。悪しからず。

 

 

  

 

 

やっと出会えた今年初のテントウ越冬集団

  新型コロナウイルスの感染拡大が止まりませんね。これではとても、ゴールデンウィーク前後の海外虫旅の予約などできません。4度目の台湾行きを予定していたのですが、もはや完全に諦めムードです。予約しても、航空便がキャンセルとか、日本人受け入れ禁止とか、日本人はすべて14日間の隔離とかになったら、悲惨ですから。

 悲しみにうちひしがれながら、なるべく人込みを避けて、千葉方面をうろうろしていたら、今年初のテントウムシ越冬集団に出会いました。

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今年初のテントウムシ越冬集団。これがないと、新し年を迎えた気分になれません

 昨年の台風被害で、いつものテントウ越冬地が水浸しになってしまったので、今冬は大きな越冬集団には会えないかもと、半分諦めかけていたので、この程度の集団でも嬉しい。カメノコテントウも3匹混じっています。

 

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木の幹側にも小さなテントウムシ越冬集団

 台風被害はこのあたりでも壮絶だったようで、杉の木が大量になぎ倒されていました。

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昨年の台風でたくさんの木がなぎ倒されていた

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千葉県の台風被害の大きさを物語っています

 ついでに、毎年オシドリが来ている池を覗いてみました。でも今年の飛来は異常に少ない感じ。いつもなら10カップルぐらいはいるのに、3、4羽のオスしか見つかりませんでした。しかも、水面にかぶさる深い茂みの中に隠れていて、撮りにくいことこの上ない。

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オシドリです。分かりますか。そんな奥に隠れていなくてもいいでしょ。

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近寄ってみると、なるほどオシドリです。

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やっといい位置に出て来てくれましたが、それでも藪の中です。

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 せっかく綺麗な姿に生まれたのだから、ファッションモデルのように堂々とポーズをとって、泳ぎまわってほしいものですね。でもオオタカのような天敵が近くに潜んでいるのかもしれないので、無理は言えません。

 

 干潟にも寄ってみました。

 

 セイタカシギが優雅に浅瀬を歩き回っています。ピンクの足には温度の感覚がないのでしょうか。真冬に素足を水中に浸けっぱなしで、寒くないのか心配になりますね。鳥フルのような風邪などひかないように。

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干潟のセイタカシギ

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ピンクの足は寒さであかぎれになっているわけではありません。

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干潟のカニも寒さは平気なのか

 干潟の近くには、越冬するシジミチョウ、ムラサキツバメの姿もありましたが、単独さんが2匹いただけで、集団は確認できず。

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越冬するシジミチョウ、ムラサキツバメです

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ツバメと言っても鳥ではありませんので念のため

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前出の写真、分かりにくかったですよね。ここにシジミチョウがいたの分かりましたか。

 これも昨年の台風の影響でしょうか。今年は天災の少ない穏やかな年になってほしいものですが、新型コロナウイルスも天災の1つだとすると、幸先悪いようです。皆様、くれぐれもお体を大切に。

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑱パシリスの蝶とイモムシと超がっかりマーライオン

 新型コロナウイルスの感染拡大で外出する気になれず、鬱々としている人も多い今日このごろ。昆虫記者も、ウジウジと部屋にこもって、過去の海外虫旅を懐かしんだり、次の虫旅に思いをはせたりしています。

 日本政府は水際対策を逐次強化するとか言ってますが、米国のように最初にバーンと強力な入国禁止措置を取って、不要なら逐次緩和していく方が人々は安心するような気がしますが、いかがでしょうか。

 ということで、鬱々、ウジウジしながら、今回はシンガポール虫旅の第18回、パシリスの蝶とイモムシと蛹です。

 

 シンガポールが街中に蝶を呼ぶプロジェクトを進めていることは、バタフライ・トレイル@オーチャードの回に紹介しましたね。実はここパシリスでも駅前にカバマダラの食樹のジャイアント・ミルクウィード(アコン)をたくさん植えて、蝶を集めているのです。

 

 アコンの花の周囲にはたくさんのカバマダラが群れ飛んでいました。

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アコンの花にとまるカバマダラ

 ここが駅の出入り口です。左側の黄緑色の並木がアコンです。

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パシリス駅の出入り口。左側の並木がジャイアントミルクウィード(アコン)です

 まだ木が小さいので、蝶も、幼虫も、蛹も見つけやすくなっています。シンガポールに来てどうしてもカバマダラの幼虫や蛹が見たいという人(そんな人いるかわけない)はMRTイーストウェスト線の終着駅のパシリスに行きましょう。ただし、普通の観光客が見たいようなものは、一切ありません。

 

 駅前の商店街を行き来する人々は、蝶に無関心のようですが、こういう何気ない町中の風景に蝶の姿が溶け込んでいるというのが、ナチュラルでいいですね。

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人々が通り過ぎる横で、蝶が飛び交う

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 カバマダラの幼虫の姿も簡単に見つかります。激しく食害された葉っぱが目印です。

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カバマダラの幼虫もたくさんいる。蝶を呼ぶのが目的なので、葉を食い荒らしても駆除されることはないようです

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カバマダラ幼虫の美しすぎる模様は、毒があることを鳥たちに警告するもの。

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イモムシの美しさと気味悪さは紙一重です

 蛹もいくつかぶら下がっていました。マダラチョウの仲間独特のヒョウタンのようなツルンとした蛹です。

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カバマダラの蛹

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蛹は上の方の葉に付いているのが多いようです。

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カバマダラ幼虫と蛹のコラボ

 アコンの花と実はこんな感じです。実はガガイモ科独特の形ですね。実が割れると巨大タンポポの種のような綿毛付きの種が出てくるのでしょうか。

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アコンの花

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アコンの実

 

 駅を出ると、目の前の森がパシリスパーク。その先にパシリスビーチがあります。

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パシリスパークは駅の目の前

 パシリスパークに入ると、前羽が青く輝く蝶がいました。最初はルリマダラかツマムラサキマダラの♂かと思ったのですが、蝶の専門家の友人から、ヤエヤマムラサキの♀だと教えていただきました。タテハチョウ科マダラチョウ亜科の蝶ではなく、タテハチョウ科タテハチョウ亜科の蝶だそうです。

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ヤエヤマムラサキの♀。マダラチョウの仲間に擬態して身を守っているそうな。

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表は派手なヤエヤマムラサキも、裏は地味

 毒のあるマダラチョウの仲間に擬態して、身を守っているらしいです。マダラチョウでは♂が派手なのに、ヤエヤマムラサキは♀が派手ということで、複雑怪奇ですね。

 

 パシリスからの帰りにマーライオン公園に寄り道。ここから眺めるマリーナベイサンズも見ごたえがあります。

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マーライオンパークから眺めるマリーナベイサンズ

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 望遠で撮ると、マリーナベイサンズの屋上プールで記念撮影する人々の姿まで見えます。

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マリーナベイサンズの屋上プールで記念撮影する人々

 そして、マーライオンパークと言えば、マーライオンですね。まずは小マーライオン。普段は無視されがちな小マーライオンが人だかりになっているのは不思議だと思っていたら、すぐにその理由が分かりました。

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マーライオン

 何と、大マーライオンは修復工事中で、檻の中に閉じ込められていたのでした。最近は世界三大がっかりの汚名を返上した感のあったマーライオンですが、これは超ガッカリ。超ガガーンな展開ですね。虫ばかり持ち上げて、観光名所をないがしろにしてきた昆虫記者の普段の行いの報いでしょうか。

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マーライオンは四角い檻の中に閉じ込められていた

 

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑰パシリスの休日のお供は蛇とカブトガニとサイチョウ・続き

 シンガポールのパシリス・ビーチの続きです。前回の題名にサイチョウとありながら、サイチョウが出てこなかったので詐欺だと思って、JAROに連絡した人もいるかもしれませんね。手が後ろに回るのは嫌なので、前回載せ忘れていたサイチョウです。

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シンガポールの公園に野生のサイチョウ現る

 あの「ガガーン」のマングローブ散策路閉鎖のショックから、いまだ立ち直れず、散策路をとぼとぼと引き返した時のことでした。水路の小さな橋の上に張り出した枝の上に、カラスを何倍にもしたような巨大な鳥がとまっているではありませんか。

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左の木の枝の上にサイチョウがいます。

 「サ、サ、サイチョウ」。そうです。何と近代都市国家シンガポールの公園に、野生のサイチョウが来ていたのです。ここは動物園とか、鳥類園ではありません。ただの海辺の公園です。ごくごくまれに、シンガポールでもサイチョウを見かけることがあると聞いてはいたのですが、本当に出会えるとは思っていませんでした。キタカササギイチョウというサイチョウの中ではいちばんありきたりの種類ですが、目の前で見ると迫力です。

 

 左の木の上にいます。至近距離です。じりじりと近づきながら写真を撮ります。

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イチョウは堂々たる鳥です。近づいても逃げる気配を見せません

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頭の上の際の角のような付属品がサイチョウの名前の由来です。

 近付いていくと、橋の右側の木に飛び移りました。遠くに行かず、色々なポーズをとってくれるサービス精神あふれるサイチョウです。

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右側の木に飛び移ったサイチョウ

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白いフワフワの羽毛に覆われた太い足も立派です。

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こっちを向いてと頼むと、向いてくれます。

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口を開けてと頼むと、開けてくれます

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でも口を開けるとちょっと怖い。噛みつかれたらかなり痛そう

 5分か10分ほど、撮影に付き合ってくれたやさしいサイチョウでした。

 

 マングローブ林の遠景はこんな感じです。散策路が閉鎖されていなければ、もっと色々見られたのにと、つい欲張りな願望を抱いてしまいます。

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水路を囲むマングローブ

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サギの姿があちこにに見られますが、サイチョウと比べると迫力は今一つ。

 パシリスの鳥がサギだけだったら、本当に詐欺になるところでした。あぶない、あぶない。

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑯パシリスの休日のお供は蛇とカブトガニとサイチョウ

 シンガポールの海辺と言えば、セントーサかイースト・コースト・パークと答えるのは、素人と言うか、まっとうな常識人ですね。昆虫記者のお勧めは、チャンギ空港の北西のパシリス・ビーチです。でもカリフォルニアのビーチのような素敵な雰囲気を期待して行くと、「騙された」と嘆くことになります。おしゃれな店もないし、海の水もエメラルドブルーとはとても言えません。それどころかビキニ姿のピチピチギャルなんて1人もいません。

 でもここには、先進都市国家シンガポールとは思えない自然が残されているのです。駅近のお手軽旅なのに、南国のマングローブの森に囲まれた秘密の海辺の雰囲気が味わえるのです。

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こんなカブトガニとかいるはずです。

 

 それではマングローブ林に入ってみましょう。

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パシリスのマングローブ林の中の散策路

 素敵な散策路ですね。この先には入江が広がっていて、水辺の生物がどっさり見られるはずなのです。

 

 ところが、何と、ガガーンな展開。

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マングローブ林の散策路は、ここからが見どころという地点で閉鎖です。

 またしても工事中で閉鎖です。先日のバタフライ・トレイル@オーチャードでも、一番の蝶の名所が巨大工事の真っ最中で立ち入り禁止になっていたので、連日のガガーンな展開です。

 

 しかし落ち込んでばかりいても明るい未来は開けないので、周囲を丹念に見回すと、かわいい蛇がいました。

 

 パラダイススネークという楽しそうな名前の蛇です。あとで調べて分かったのですが、このヘビはたぶん、パラダイストビヘビとも呼ばれていて、肋骨を広げて体を扁平にして、ムササビのように空を滑空することができるのです。

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空飛ぶ蛇、パラダイススネーク。飛ぶところを見たかった。

 うーん、飛ぶところを見てみたかった。しかし、ほとんど人に害はないとはいえ、一応毒蛇のようなので、つかまえて飛ばせてみるなんてことはしない方がいいでしょう。

 

 さらに、水中でじっとしているヘビを見つけました。ドッグフェースド・ウォータースネークというミズヘビの仲間です。汽水域に棲んでいて海を渡ることもあると言います。ウミヘビと陸上の蛇の中間みたいなやつです。

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水中でじっとしているミズヘビ。

 トビハゼも何匹かいました。こいつらがミズヘビの餌食になるのでしょう。

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トビハゼ

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 海辺に出ました。岸辺までマングローブ林が張り出していて、ネーチャー感があふれています。

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マングローブに囲まれたパシリスビーチ

 たまに地元の家族連れが遊びにきています。

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 そして波打ち際にカブトガニの姿。

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いました、カブトガニ

 でも残念、ひっくり返してみたら、最近お亡くなりになっていたようです。

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 海岸にはマングローブの実がたくさん流れ着いています。木の上から落ちると、泥に突き刺さって、そこから新しいマングローブが芽生えると言われているあの実ですね。

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マングローブの実は本当に地面に突き刺さるのか

 試しに上から落としてみました。すると、ブッスリ。

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浜辺に突き刺さった(ように見える)マングローブの実

 なんてうまくいくはずはありません。そんな簡単に砂浜に突き刺さるわけはありませんね。無理やり突き刺したやらせ写真です。

 

 

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑮マリーナベイサンズの庭

 MRTのベイフロント駅前にそびえる巨大ホテル、マリーナベイサンズはシンガポールのランドマークとしてすっかり定着しましたが、その庭とも言うべき巨大植物園、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの知名度は低いかもしれません。101ヘクタールもある広大なこの植物園は2012年にオープンしたばかりで、まだまだ昆虫濃度は低いですが、熱帯のシンガポールですから、いずれは昆虫天国になることでしょう。

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マリーナベイサンズの写真は海側から撮ったものが多いですが、ガーデン側から撮る写真の方が南国らしくていい感じです。ドラゴンフライ・レイクのトンボのオブジェが虫好きを引き付けます

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ガーデンの木々を前景に撮ったマリーナベイサンズ

 ここを紹介するからには、ベイサンズに泊まったのだろうと思う人もいるかもしれませんが、そんな金銭的余裕はありません。ただ見上げるだけです。

 このあたりはかつては昆虫記者の庭のようなものでした。シンガポール特派員時代、休日にはよく虫探しに来たものでした。当時はまるでジャングルのようなところで、ふんだんに虫がいて、時々毒蛇のコブラに遭遇したりする楽しくもあり、恐ろしくもある場所でした。

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今はまだ虫が少ないガーデンズ・バイ・ザ・ベイですが、いずれ昆虫天国になるでしょう。小さなハゴロモを見つけました

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シンガポールではよく見かけるハゴロモですが、近寄って見ると意外にきれいです

 今ではそのジャングルが一掃され、ベイサンズとガーデンズ・バイ・ザ・ベイになっています。クルーズ船センターに至る海岸線は、まだ植林の途中で、更地のままのところも多く見られます。コブラはいなくなったでしょうが、虫や鳥、その他の生き物も激減したと思われます。世界中から訪れる観光客にとっては喜ばしく、昆虫記者にとっては悲しい現実です。

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ガーデン内にはこんな芸術作品も

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ガーデン内を歩く観光客はほとんどいません。地元の幼稚園の遠足でしょうか。

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ドラゴンフライ・レイクには葦原のような環境も整備されているので、そのうちトンボも増えるでしょう

 

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まだトンボも多くはありません。

 でもガーデンズ・バイ・ザ・ベイという新たな緑のオアシスを作ってくれたことは、せめてもの慰めです。熱帯の昆虫はしぶといですから、いつの日か、かつての繁栄を取り戻すことでしょう。

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ガーデン内には巨大なグリーンハウスがあります。

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対岸に見える巨大観覧車、シンガポールフライヤー

 新しい植物園より、街中の空き地の方が管理が行き届いていない分、虫の姿が多く見られます。

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空き地にいた虫。たぶんカッコウムシの仲間

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空き地にはチビフタオチョウの幼虫もいた

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シンガポールのアオスジアゲハの幼虫は、野生のシナモンの葉を食べる

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バナナの葉を巻いていたのは、たぶんバナナセセリの幼虫

 でも、そんなただの空き地を散策するのは、飼い犬の用足しを目的とした人ぐらいしかいません。まして、そんなところで虫を探す怪しい人物は昆虫記者だけです。

台湾総統選で蔡が圧勝。中国人観光客急減で苦境の台湾は日本人を待っています。

 11日に行われた台湾総統選挙で、現職で民主進歩党民進党)の蔡英文氏が、圧倒的な勝利を収めました。台湾の政治に介入する権利も力もない昆虫記者ですが、社内の知人の台湾人女性の陳さんが蔡氏を応援していたので、この結果は非常に嬉しいです。写真部記者、つまりカメラウーマンの陳さんは、わざわざ蔡氏に1票を投じるために、里帰りしていたのですから、蔡氏の当選で、陳さんにも「おめでとう」と言えるのです。

 いやいや、良かった。これで心置きなく、陳さんの台湾土産を受け取れます。蔡氏の当選より、本当はお土産の方が嬉しかったりして。「陳さん、お土産待ってまーす」って、不謹慎ですね。陳さんは、遊びに行ったわけではないのです。真剣に台湾の将来を考えて、1票を投じに行ったのです。 

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2011年に行った台湾・高雄の蝶の谷として有名な茂林地区の紫蝶幽谷。ルリマダラの仲間の集団越冬地として有名です。ルリマダラの飛翔姿をご覧ください。

 昆虫記者はノンポリではありますが、蝶の国であり、昆虫大国である台湾が、いつまでも自由と人権を尊重する民主主義の国であり続け、虫撮り旅に支障が出ないことを望んでいます。昆虫趣味のような、国家目標に全く貢献しない活動は、共産主義下では迫害されかねないので、中国と距離を置く民進党政権の方が、親中派の国民党政権よりも、安心できるというわけです。

 中国では日本人が何人も、はっきりした理由も明らかにされないまま、拘束されていますよね。昆虫記者なんていう怪しい奴は、常に拘束の恐れがあります。カメラを3つも4つも持って、一般人が入り込まないような、森や原野に踏み込んでいくのは、相当に怪しい奴です。そんな場所に軍事機密が隠されていたら、スパイ容疑がかけられるでしょう。台湾がそんな場所になってほしくないですよね。

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紫蝶幽谷はこんなところ

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紫蝶幽谷のルリマダラの群れ

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画面中に何匹のルリマダラがいるでしょうか。

 中国政府は、中国本土、香港、台湾が「一つの中国」だと常に主張、台湾にも香港と同じ「一国二制度」を受け入れるよう求めています。それはつまり、いずれは台湾も共産主義の中国の一部になるべきだという主張ですね。その上、台湾が独立を企てるならば、統一のため武力行使も辞さないという立場を堅持しています。

 蔡氏は、現在の香港市民の民主主義支持の抗議行動について、「一国二制度」が失敗だったことを示していると分析。台湾は一国二制度の受け入れを拒否すると宣言しています。長年民主主義の下で自由を謳歌してきた2400万人近い台湾の人々は、常に共産主義の中国に飲み込まれる恐怖に直面しているのです。対中関係は台湾の行く末を左右する問題で、その対中関係が最大の争点になった台湾総統選に、市民が強い関心を持つのは当然なのです。

 

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カメラの前を飛び交うマダラチョウの仲間たち

 国民党の総統候補の韓国瑜氏は、中国との経済・貿易関係の拡大によって、台湾経済を活性化させると訴えていましたが、中国経済への依存度が大きくなればなるほど、政治的にも中国の影響力が大きくなるのは必然。その端的な例が、2019年8月からの台湾への個人旅行渡航許可の停止です。中国はそれ以前から、蔡政権下の台湾に経済的圧力をかけており、それが蔡氏と民進党の支持率低迷を招いていたのです。それなのに香港情勢を背景に蔡氏が支持を回復してきたことが、渡航停止という強硬策につながったのかもしれません。

 台湾の民進党政権が独立志向を持っていることを、中国政府は渡航停止の理由に挙げています。これを受けて中国から台湾への旅行者は、同年9月には前年同月比6割減になったとされています。

 2014,15年には台湾を訪れた中国人観光客は、300万人以上で、外国人観光客全体の40%以上を占めていました。つまり中国政府は、台湾の外国人観光客を一気にほぼ半減させる力を持っていたということです。中国に経済的に過度に依存するということは、こうしたリスクを伴うということです。

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ツマムラサキマダラの飛翔

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リュウキュウアサギマダラの飛翔

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コモンマダラの仲間

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ヒメアサギマダラ

 観光客の急減は、蔡政権にとっては大打撃です。総統選挙や立法院(議会)選挙で、独立志向の蔡氏と与党民進党を敗北させる要因になってもおかしくない状況でした。

 しかし、今回の選挙では、「今日の香港は明日の台湾」かもしれないという危機感が追い風となって蔡氏が勝利しました。

 今後も蔡政権への中国からの圧力は続くでしょう。中国人観光客が急減する中で台湾にとって希望の星は、日本人観光客です。2019年には前年比5%以上増加して、初めて200万人の大台に乗ったのです。

 みなさん、是非台湾に行きましょう。東日本大震災の際の、台湾からの官民合わせて200億円超という怒涛のような義援金を忘れてはなりません。台湾の経済規模から見ると、この額は、群を抜いて世界トップの額です。この台湾からの親愛の情に報いなければなりません。

 昆虫記者は去年を含め、既に3回台湾虫旅を敢行していますが、今年もまた行こうと思っています。台湾からの訪日観光客は年間500万人前後。日本から台湾への観光客も、是非500万人を達成したいところですね。