虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

多摩川台公園でワカケホンセイインコの求愛・交尾をじっくり観察

 今回は、またまた東京周辺で勢力を拡大する外来の鳥です。ワカケホンセイインコは、いかにも南国風の装いで、森の中を大群で飛び交うと、真冬の東京が熱帯雨林に変わったような錯覚に陥りますね。

 ワカケホンセイインコは新宿御苑などにもたくさんいますが、先日訪れた場所は、東急線多摩川駅の隣にある多摩川台公園。別にインコを探しに行ったわけではないのですが、到着するとすぐに20~30羽の群れに遭遇してびっくり。周りを歩いていた人々は全く気にする様子もなかったので、ここでは当たり前の風景のようです。

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めちゃめちゃ熱い求愛行為をみせつけるワカケホンセイインコのカップ

 しばらく群れを眺めているうちに、1本の松の木の洞に巣があることを発見。巣の中には少なくとも3羽が暮らしているようでした。うち2羽は熱愛カップルだったので、あと1羽はその子どもかもしれません。

 そのカップルの熱愛ぶりが、実に熱くて、冬なのに熱帯感ムンムンでした。失われた若き日の情熱を、なつかしく思い出しますね。

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松の木にワカケホンセイインコの巣穴を発見

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巣穴から顔を出すワカケホンセイインコ

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巣から出てきたカップルが求愛を始めました

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キスを交わすワカケホンセイインコのカップ

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お尻をすり寄せて交尾を迫ります

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オスが上に乗って交尾の態勢に

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でもなんかメスが乗り気でないような感じ。そんなこんなで、決定的瞬間は撮れませんでした。

 多摩川台公園はさして大きくない公園ですが、武蔵野の自然を味わえる散策路や、前方後円墳なんかもあって、ミニ散歩にはいいところだと思いました。多摩川の眺めが美しく、天気が良ければ富士山も見えるそうです。駅の反対側の田園調布せせらぎ公園には、眺めのいい喫茶店や休憩所があるので、両公園合わせて半日程度はのんびりできるかも。

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公園から眺める多摩川の流れ

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武蔵の雰囲気を残す散策路

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多摩川台公園東急線多摩川駅のすぐ隣です

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駅の反対側のせせらぎ公園には眺めのいい喫茶店があってのんびりできそう

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カップルで見たい相思相愛のかわいい鳥、ソウシチョウ

 虫の少ない冬は、たまに鳥も撮ります。高尾山周辺で今日出会ったのはソウシチョウ。雄と雌を引き離すと、しきりに鳴き交わす様子が、離れがたい相思相愛のカップルを思わせるので相思鳥(ソウシチョウ)の名が付いたという、ロマンチックな鳥ですね。そんな名前の由来を彼女と語り合ったら愛が深まるかも。

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可愛い上に美声のソウシチョウですが、侵略的外来種ワースト100に指定されているらしいです。

 この場所では5、6羽の小さな群れが、人通りが絶えるたびに路上に出て、木の実をついばんでいました。日陰なので、ちょっと粗い画像なのが残念です。

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ソウシチョウの大きさはスズメぐらい

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木の実を食べるソウシチョウ

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相思相愛のソウシチョウカップルかも

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赤い嘴が口紅のようでかわいいソウシチョウ

 相思相愛の象徴と言われても、1人で虫撮りに来た寂しい中高年男にとっては、わびしさが募るばかり。

 このソウシチョウ、見た目がこんなに可愛いのに、何と日本の侵略的外来種ワースト100にランクインしているらしいです。もともと、観賞用、愛玩用に海外から持ち込まれたものが、逃げ出して野生化したとのこと。悪意を持って侵略してきたわけでもないのに、侵略者扱いされるのはかわいそうですね。

エゾカタビロオサムシの越冬前セクシーポーズ

 師走前の水元公園では、意外な収穫もありました。背中の金色の点刻が美しいエゾカタビロオサムシです。東京都区部都市公園で、エゾカタビロに会えるとは、思ってもいませんでした。

 ゴツゴツした樹皮の中に潜り込んで越冬しようとしていたようなのですが、樹皮の割れ目が小さすぎて、お尻が丸見え。

 頭隠して尻隠さずの典型で、「ここにいるので見つけて下さい」と言わんがばかりのセクシーポーズ。お尻をつまんで引っ張り出しちゃいました。

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水元公園のエゾカタビロオサムシ。金色の点刻がチャームポイント

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エゾカタビロオサムシはこんなセクシーポーズで越冬準備

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寒そうなお尻の点刻を拡大してみました。

 

 水元公園ヨモギには、寒さに負けずせっせと交尾に精を出すヨモギハムシのホットなカップルの姿も。見ているこっちまで熱くなってきますね。

 ヨモギハムシは本当に寒さに強いハムシで、1月、2月でもよく姿を見かけます。成虫越冬が多いハムシの中で、ヨモギハムシの越冬態は基本的に卵だと思うのですが、年明け後に産卵する個体は、成虫越冬と言ってもいいですね。

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寒空の下、交尾に精を出すヨモギハムシ

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ヨモギハムシの成虫は1月、2月にも見かけることがあります

 

 ススキの葉を巻いて糸でつむいだ隠れ家の中にはセセリの幼虫(イチモンジセセリ、チャバネセセリ、キマダラセセリなどが多いです。今回のはたぶんイチモンジセセリ)。巻いた隠れ家の前後の部分が食べられて、細くなっているのが特徴です。

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イネ科植物のセセリ幼虫の隠れ家は特徴的なのですぐそれと分かる

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筒状の隠れ家を開くと、中にセセリの幼虫がいます

 冬場の虫の少ない時期、セセリの幼虫を探すなら、この特徴を見逃さないように(超地味で蛾だと誤認されることも多いイチモンジセセリなので、わざわざ幼虫を探す人はまずいないとは思いますが)。周囲に食痕がなくて、ただ巻いているだけというのは、中にクモとか、ハマキ蛾系の幼虫がいる確率が高くなります。

 死んだアオマツムシは、ヨコヅナサシガメの幼虫の餌になっていました。冬らしい冷え冷えとした光景ですね。

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死んだアオマツムシの体液を吸い取るヨコヅナサシガメの幼虫たち

防護柵には越冬トンボのホソミオツネントンボ。水元には結構多く生息しているらしいです。

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水元公園のホソミオツネントンボ。そろそろ越冬態勢に入ります。

 葉からゴマの香りがすることが名前の由来のゴマギには、サンゴジュハムシの卵がどっさり付いていました。つまりゴマギも、サンゴジュと同じガマズミ属の木ということになります。全然似てない木ですが、サンゴジュハムシがいることで、同じ属だと分かりますね。うーん、植物と虫の関係は深い。

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この糞を固めたブロック塀のようなものの下にサンゴジュハムシの卵があります。

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糞のブロック塀を壊してみると、下の卵が姿を現します。

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サンゴジュハムシの成虫はこんな地味な虫です。庭のサンゴジュがぼろぼろになっていたら、こいつとその幼虫の仕業。

 

マツヘリカメムシが芸術的に見える瞬間

 侵入確認が2008年ごろと、日本ではまだ新参者のマツヘリカメムシですが、最近は東京近郊のあちこちで出会うようになりました。今回は葛飾区の水元公園のトイレでバッタリ。皇居東御苑、生田緑地にもいました。カメムシ類は飛翔距離が半端でないので、外来種の拡散の勢いは半端ではないですね。

 マツヘリカメムシはやや地味なカメムシですが、そのマツヘリが、非常に芸術的に見える瞬間があることを今回、偶然発見しました。上翅を半開きにした時に、腹部の模様と下羽の筋が重なって、見事な幾何学模様になるのです。暇な人は一度試してみて下さい(そんな暇人はいない)。

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地味系のマツヘリカメムシが芸術的に見える瞬間

 

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芸術的でない普通の状態のマツヘリカメムシ

 師走が近づくと、昆虫界も地味なものが多くなるので、このマツヘリの艶姿は貴重です。

 それ以外の水元公園の虫は、いかにも冬間近という感じで、地味系ぞろいでした。まずは、フサヤガ。冬らしい地味な装いですが、とまっている時の形状はなかなかにユニークです。

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枝につかまっている時のフサヤガは、たいていこの奇妙な姿

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フサヤガの正面顔

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フサヤガは何の変哲もない普通の蛾の恰好になることもあります。

 時間がないので今日はここまで。

一度噛みついたら首が千切れても放さないというクビキリギリスの噂は本当なのか

 今回は「首切り」の話。虫ばかり追いかけていて、昆虫記者もついに会社を首になったのです。というのは嘘。クビキリこと、クビキリギリスの話です。

 冬に見られるキリギリスと言えば、その代表がクビキリギリスですね。イソップ寓話に出てくる哀れなキリギリスは、真冬に食べ物をを求めてアリの家の戸をたたくので、モデルは越冬キリギリスのクビキリかも。

 そんなクビキリを先日千葉の公園で見つけました。まずはあの恐ろしい赤い口を確認しないといけません。口が黒かったら、よく似たシブイロカヤキリなので、間違えないよう気を付けましょう。

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見るからに恐ろしいクビキリギリスの赤い口。噛みつかれたら流血の惨事に

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よく似たシブイロカヤキリは口が黒いそうです。今度確かめてみます。

 そしてクビキリギリスが怖いのは、牙をむきだしたようなこの赤い口。一度噛みついたら、クビが千切れても放さないと言われていて、それが「首切り」の名の由来だそうです。指に噛みつかれたら、流血の事態は必至とも言われています。

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千葉の公園で見つけた越冬前のクビキリギリス

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無理に枝から引き離そうとしたら、牙をむきだして怒りの形相に

 昆虫記者の名を語るならば、実際に自分の指に噛みつかせて、これらの噂が真実なのか確認すべきだという声もあるでしょう。でも沈着冷静な昆虫記者は、そんな無謀なまねはしません。決して怖気づいたわけではありません。でも、あえて試してみたいという人がいるなら、それを制止するつもりはありませんので、結果を教えていただければありがたいです。

 

子どもが拾ってきたドングリを放置すると大変なことに。シギゾウムシ、チョッキリ、蛾が続々

 秋の遠足。ドングリ拾いは楽しいですね。でも、子どもが拾ってきたドングリを室内に放置すると、虫が出てきて大惨事を招くことがよくあります。

 ドングリころころ、ドングリこ♫ なんて歌いながらドングリ拾いをする子供たち(そんな子どもは今時いないかも)は可愛いですね。でも拾ってきたドングリの扱いには注意しましょう。中から虫が出てくる確率はかなり高いです。

 特に危険なのはクヌギのドングリ。コナラのドングリもかなり危ないです。

 

 先週末に半分土に埋まったクヌギ・ドングリを拾いあげたところ、ちょうど中からゾウムシ(たぶんクヌギシギゾウムシ)の幼虫が出てくるところでした。こんな幸運(あるいは不運)はめったにないですね。嬉しくてバシバシ写真を撮りました。

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クヌギのドングリから顔を出したシギゾウムシの幼虫

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ドングリから虫がはい出てくる瞬間に立ち会えるなんて、そんな幸運はめったにない。

 そして近くに落ちていたクヌギ・ドングリを多数拾い集め、家に持ち帰って、さらに幼虫が出てくるのを待ち構えていると、数日のうちに4匹が出現。嬉しくてバシバシ市写真を撮りました。

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クヌギのドングリから出てきた幼虫たち

 でも、これが虫嫌いの家庭だったらどうでしょう。ドングリの中から粉が噴出し、ウジムシのような白くブヨブヨした虫が、絨毯の上を這いまわっているーーなんて光景、想像するだけで恐ろしいですね。

 

 でもこれは、将来かわいいシギゾウムシになる幼虫です。翌年まで大切に育てて、子どもたちの虫好きの芽を育てたいものです(夢物語ですね)。

 

 そういう素晴らしい子供たちのために一応、成虫の写真も紹介しておきます。

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たぶんクヌギシギゾウムシの成虫

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たぶんコナラシギゾウムシの成虫

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ハイイロチョッキリの成虫。幼虫はコナラ・ドングリの中にいる。

 しかし、ゾウムシになるならまだいいですが、出てきた虫がおぞましい蛾になることもよくあるようです。

 

 6本の歩脚がある芋虫が出てきたら(ゾウムシの幼虫なら歩脚はありません)それはきっと蛾の幼虫です。

 

 でもクヌギのドングリから出てきた蛾の幼虫が、結構きれいな成虫になることもあります。今年のドングリから出てきた幼虫は、モモノゴマダラノメイガというファッショナブルな蛾になりました。こちらは出てきたらすぐに蛹室を作って、あっという間に成虫になりました。ゾウムシ飼育より断然楽ですね。でもドングリから出てきた蛾を愛でる人は少ないでしょう。

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幼虫がドングリから出てくることもあるモモノゴマダラノメイガ

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モモノゴマダラノメイガの幼虫は実から出てくるとすぐに蛹になり、間もなく成虫になった。

 

ポロポロ落ちる不思議なアカイラガの毒針

 先週、フジの葉を食べているアカイラガの幼虫を見つけました。可愛い幼虫ですが、毒針を持っているので、触ってはいけません。刺されるとかなり痛いそうです(試したことはありません。どなたか勇気のある人は試してください)。

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アカイラガの幼虫。毒針付き肉塊がある緑の幼虫(左)と、肉塊の大半を失った半透明の幼虫(右)

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フジを食べていたアカイラガ幼虫。食樹一覧にはなかったが、何でも食べるようだ。

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赤い棘の部分の毒針が特に痛そう

 アカイラガの幼虫と言えば、毒針付きの肉塊が、ポロポロと簡単に体から落ちるのが有名ですね。以前見つけた幼虫は、すでに幾つか肉塊を失っていましたが、今回のは、全部の肉塊を備えているようでした。

 これは毒針付きの肉塊が取れていく様子を観察するには絶好ですね。取れた肉塊を触っても、毒注入の危険があるのかどうかも気になるところですが、私は試しません。どなたか勇気のある人は試してください。

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落ちた毒針付き肉塊。ネバネバしているので、服に付着すると厄介かも。

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肉塊が少なくなってきたアカイラガ幼虫

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肉塊を失うにつれて、体が透明になっていくアカイラガ幼虫

 先が赤く尖った毒針付き肉塊をほぼすべて失うと、それまで緑色だった幼虫は、なぜか半透明のプニュプニュのグミのようになってしまいます。この状態もまた、結構可愛いです。

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半透明になったアカイラガ幼虫と、落ちた毒針付き肉塊

 この状態でも小さな針のようなものは残っているので、まだ毒注入能力が残っているのかもしれません。私は試しませんが、勇気のある人はご勝手にどうぞ。

 プニュプニュのグミ状態になると、その後すぐに繭を作りました。羽化は来年でしょう。

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アカイラガの繭。普通は浅い土中などで繭を作るようです。

 一応成虫の写真も載せておきます。

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アカイラガ成虫

 良く見かける蛾ですが、対して魅力的でないので、いつもいい加減に撮影していて、良い写真は1枚もありませんでした。反省してます。