虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

ユリシス(オオルリアゲハ)全滅の悪夢・豪キュランダの旅

 トロトロとしている間に、もう次の海外虫旅の予定が迫ってきました。やっつけ仕事で、オーストラリア・キュランダの虫を片付けないといけません。

 もともとの安易な計画では、オーストラリア最大の蝶園であるキュランダのバタフライ・サンクチュアリで、幸せの青い蝶伝説で有名なユリシス(オオルリアゲハ)の写真をバシバシ撮って、何の苦も無く幸せになれるはずだったのです。奥菜恵さん主演の映画「ユリシス」のおかげで、日本人の間では、この伝説がかなり広く知られているようです。たったの3回ユリシスを目撃すれば幸せになれるのです。幸せを手に入れるのは、こんなにも簡単なのです。
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 ところが、蝶園に入ってみると、ユリシスが一匹もいません。ユリシスのユの字もない感じです。ユリシスを一番の売り物にしているはずの蝶園で、こんなことはあり得ないではありませんか。

  蝶園の女性スタッフに尋ねてみて明らかになったのは、衝撃の事実でした。なんと、オーストラリア全土の蝶の飼育施設で、ユリシスがほぼ全滅したというのです。正体不明のウイルスか寄生虫にやられた可能性が高く、幼虫の段階で、すべてのユリシスが黒く縮んで、死んでしまうのだそうです。
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   標本を見ても幸せにはなれません。

 泣きの涙に暮れていると、女性スタッフから「自然のユリシスならまだ見られる可能性がある」との救いの言葉。スタッフに案内された場所は、蝶園の裏庭に面した渡り廊下です。裏庭には、蝶の植樹のMelicope elleryana(Pink Euodia)がたくさん植えてあるので、野生のユリシスがしばしば見られるのです。

 翌日、無理を言って入園料をただにしてもらい、渡り廊下でユリシスを待ちます。すると10分に一度ぐらいの頻度で、ユリシスがやってくるではありませんか。しかし、ユリシスは高速飛行で有名な蝶。その上、樹上にとまった際には翅を閉じるので、幸せをもたらす青い輝きは全く見えないのです。

 飛んでいるところを撮ったゴミ写真を集めたのがこれです。これでは幸せになれるとは、とても思えないですね。
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 ほかにも、きれいな蝶はたくさんいたのですが、やっぱりユリシス以外は、「その他の蝶」扱いにならざるを得ません。
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    蝶園のミドリメガネトリバネアゲハ

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   野外のミドリメガネトリバネアゲハ

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   緑の眼鏡は、♂が翅を開いた時にだけ見えます。


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   野外の蝶、スモール・グリーン・バンディット

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   野外の蝶、オレンジ・エアプレーン

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野外の蝶、オレンジ・ブッシュ・ブラウン

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   野外の蝶、ケアンズ・ハマドライアド

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   野外の蝶、リュウキュウムラサキの♀

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   野外の蝶、コモンタイマイ