虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

幸せの青い蝶と幸せの青い鳥、真冬の対決の勝者は?

 11月下旬の葛西臨海公園。晩秋から冬にかけてのこの公園の名物と言えば、ムラサキツバメ、ムラサキシジミという2種類の幸せの青い蝶ですね。なんて思っているのは、虫好き、あるいは昆虫記者のような虫バカだでです。

 

 ムラサキツバメ、ムラサキシジミにはそれぞれにテリトリーがあるようで、2種類が一緒に羽を広げて、青い紋を見せつけている場面は滅多に見られません。本当に、本当に滅多に見られません。はっきり言って、同時に2種類の開翅を写真に収めることなど、ほぼ不可能です。なぜここまでしつこく、その難度を強調するのかと言うと、今回その写真が撮れたからです。単なる自慢です。「自慢、高慢、馬鹿のうち」「自慢の糞は犬も食わぬ」ですね。

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手前がムラサキツバメ、後ろがムラサキシジミ。青い羽を開いて一緒に一枚の写真に収まることは滅多にない。

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上がムラサキツバメの♀、下がムラサキシジミの♀。ムラサキツバメには燕尾服のように尾状突起があります。

 望遠カメラを担いで葛西臨海公園を訪れる人々の99%は鳥目当て。虫目当てなどという不届き者は、昆虫記者ぐらいです。幸せの青い鳥と言えば、一番ポピュラーなのはカワセミでしょう。珍しい鳥だと思っている人もいるでしょうが、池があったり、小川が流れていたりする公園ならば、都内でも大抵どこにでもいます。我が家の近くのさして大きくない猿江恩賜公園でも時々見かけるし、仙台堀川なんていう墨田川と荒川を結ぶ水路にもいます。そうなのです、取り立てて騒ぐほどの鳥ではないのです。そしてこの日の葛西にも、カワセミはいました。やっぱりどこにでもいる鳥なのです。

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葛西の鳥類園の観察小屋にカメラマンがわんさと集まっていました。目当てはきっとカワセミ

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カメラの先にはやっぱりカワセミ

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人気があることを知って、おごり高ぶった態度です

 それと比べて、ムラサキツバメ、ムラサキシジミはどうかと言うと、これまた、もっと、もっと、都内のどこにでもいる普通の蝶です。しかも、真冬も含めてほぼ1年中、見られます。

 なので、被写体としてそれほど人気がありません。この日、カワセミのポイントには人だかりができていたのに、青い蝶のポイントには昆虫記者以外、誰もいませんでした。

 

 しかーし、この蝶が羽を大きく広げて、青く輝く紋を見せつけるのは、圧倒的に11、12月なのです。成虫越冬する蝶なので、晩秋から初冬の暖かい日差しの日には、ぬくもりを惜しむかのように、日向ぼっこに精を出すのです。カワセミなど、1年中いつでも同じような写真が撮れるのに、なぜそんなにもてはやすのか。今、撮るべきはムラサキツバメ、ムラサキシジミだと言いたい。

 とか言いながら、やっぱり昆虫記者も人だかりに割り込んで、カワセミの写真を撮ってしまいましたとさ。めでたし、めでたし。

 

 ムラサキシジミはオスもメスも青い紋があってきれいですが、ムラサキツバメのオスは、羽を広げても、一見しただけでは喪服のように黒っぽいだけの蝶です。しかし、このオスも光の当たり方によっては、美しく輝くことがあります。なので、今回も色々な角度からムラサキツバメのオスを撮ってみたのですが、ダメでした。

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ムラサキツバメのオス。今回はダメでしたが、光の当たり方によっては、美しく輝くことも。

 何年も前に一度だけ、ムラサキツバメのオスの光り輝く瞬間が撮れたことがあるので、以下にそのリンクを貼っておきます。

 

mushikisya.hatenablog.com

 ちなみに、羽を閉じたムラサキツバメ、ムラサキシジミはオス、メスともに、かなり汚らしい感じの蝶です。この点は、カワセミに負けていると言えないこともありません。

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翅を閉じたムラサキツバメは、全く目立たない地味な姿

 さて、いかがでしたでしょうか。青い蝶ムラサキツバメとムラサキシジミvs青い鳥カワセミ。勝者は当然、青い蝶ですね…なんて言うとバードウォッチャー軍団に大砲のような望遠レンズでボコボコにされそうなので、一応引き分けということで、お茶を濁しておきたいと思います。