虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

忍者道のスズメバチそっくりの蛾、コシアカスカシバ

 高尾周辺には数多くの散策路があって、週末でもほとんど人通りのないコースも少なくないようです。
 高尾駅からすぐの裏高尾町、駒木野にある小仏関跡からも、そんな隠れ散策路があると聞き、さっそく出かけてみることに。このコース、一応は、八王子城跡へ通じるハイキングコースとされていますが、実際は獣道に毛が生えたようなもののようです。
 小仏関所は、江戸時代には甲州街道で最も堅固な関所だったそうです。そんな要所の手前から山奥へ抜ける細道は「忍者たちの秘密の抜け道だったのかも」なんて考えたりします。歴史ロマンですね。

 J℞中央線の上を陸橋で越えて、
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 中央道の下をくぐり抜けて。頭上は快適な中央フリーウェイですが、下はジメジメした蚊だらけの道です。
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 そして、「えっ、えー、これがハイキングコース入口なのー。うっそでしょ」という風景に出会いました。崖っぷちのようなところに、ロープが張ってあります。このロープを伝って、崖を上って行けということのようです。誰も来ないわけです。ファミリー向けのガイドに載っていない訳が分かりますね。
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 そんな厳しい上り坂の途中には、スズメバチがブンブンと飛んでいます。怖いですね。こんなところでアナフィラキシーショックとかなって、泡を吹いて倒れていても、1日中だれも通りかからない恐れもあります。目と鼻の先の高速道路には渋滞の車がびっしり並んでいるというのに、そのすぐ脇のハイキングコースで倒れている虫記者には、誰一人気付かない、そんなシュールな、超現実的な光景が目に浮かびます。

 ふと足元を見ると、木の根元に大きなスズメバチの姿。ドキッ。慌ててあとずさりして、崖から落ちそうになります。
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 しかし、何か変。このスズメバチは、じっとして動きません。死にかけているのかも。となればこっちが有利なので、落ち着きを取り戻して、遠巻きに写真を撮ります。

 ファインダーの中の拡大表示部分に映し出された姿は、やはり何か変。「「もしかしてこれは、スズメバチそっくりの蛾、コシアカスカシバではないか」。物理的に近づくのは怖いので、カメラのズームで寄っていきます。
 警戒色は「決めすぎでしょ」と言いたくなるほどバッチリで、何から何まで、大型のスズメバチそっくりですが、目力がないし、腰のくびれも甘い感じです。
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 思った通りスズメバチのそっくりさん、コシアカスカシバのようです。この仲間の蛾は英語ではホーネット・モスとも呼ばれているようです。ホーネットはスズメバチのことですから、まさにスズメバチ蛾なのです。

 ヘッヘッヘ、騙されないぞ。ただの蛾じゃないか。何も恐れることはない。モニターで撮ったばかりの画像を確認します。かし、そこへ、ブブーンと羽音。忘れていましたが、本物のスズメバチも周囲にたくさんいたのです。

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  本物のスズメバチは目力があって、腰がキュッとくびれています。

 すると、疑心暗鬼が生じます。「もしかして、木の根元にいるやつも、コシアカスカシバに成りすましたスズメバチ?」。なにせここは忍者の抜け道ですから、そんな怪しい蛾スズメバチがいても不思議はないのです。スタコラサッサと逃げ出す虫記者でありました。