春の葛西臨海公園。大型連休中に家族やカップルで訪れる人が多かったことでしょう。昆虫記者は、家族連れの明るい歓声が響く中、一人寂しく虫撮りをしておりました。
葛西臨海公園と言えば、大観覧車が目玉施設の一つです。海辺の風景と、公園の緑、都会の街並みのすべてが一望できて、天気が良ければ富士山も見えるというサービス満点の乗り物なので、デートで乗れば恋が成就することでしょう。もちろん、幸薄い昆虫記者は乗ったことがありません。
観覧車を背景に芸術的な虫写真を撮ってみました。
どこが芸術的なのか全く分かりませんね。左手から突き出ている棒きれのようなものは一体何なのでしょう。風景の邪魔でしかないですね。
この棒きれはシャクトリムシです。色合いや猫耳が特徴の頭の形から、もしかすると「土瓶割り」として有名な巨大シャクトリムシのトビモンオオエダシャク幼虫ではないか、などと期待に胸を膨らませるのは、ごく少数派の虫好きの中でも、極めてまれなイモムシ好きだけでしょう。
トビモンオオエダシャク幼虫は、最終的には全長9センチほどになるという巨大シャクトリムシですが、この時期はまだ小さくて、トビモン小エダシャクです。しかも、このサイズではトビモンかどうかさえ、不明確です。このままのサイズで蛹になって、小さな別の蛾になる可能性だってあります。さらに十中八九は、蜂などに寄生されていて、正体不明のまま死んでいきます。
シルエットでない姿はこんな感じです。
もっと小さいのもいました。
この場所では計4匹、同じシャクトリムシを確認しました。いつの日か、巨大シャクトリムシになって、土瓶を割ってほしいものです。
「土瓶割り」とはトビモンオオエダシャク幼虫の愛称です。農家の人が野良仕事の際に、巨大シャクトリを木の枝と思って土瓶を掛けたところ、枝がグニャリと曲がって土瓶が落ち、粉々になったという逸話によるもののようです。
全く農家の人をバカにした話ですね。農家の人は都会の人と違って、自然の知識が豊富なはず。従ってトビモンオオエダシャクのことも良く知っているので、こんな間違いは犯しません。
農家の人に謝罪する気持ちで、もう一枚、観覧車の芸術的インスタ映え写真を撮ってみました。歩道橋の円形模様は観覧車をイメージしたものでしょうか。そこを自転車の車輪が通過することで、五輪の風景になりました。
たぶんまだ誰も、ここでインスタ映え写真を撮った人はいないのではないかと思います。(もしかしたらいるかも。いたらすいません)。今後ここがインスタ映えの名所になって、近隣の方々の大迷惑となっても、昆虫記者は責任を負いません。
広い葛西臨海公園内を巡る園内周遊の機関車風バスも、名物の一つです。
周遊機関車をバックにトビモンオオエダシャクのインスタ映え写真を撮ってみました。こちらは誰も真似しないでしょう。
一匹だけ持ち帰ったトビモンオオエダシャク幼虫(希望的観測です)が少し大きくなって、猫の耳も大きくなりました。
トビモンオオエダシャクであってほしいものです。(誰も期待してない)。