虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

鎌倉の休日の恐怖体験、首だけの蛇と骸骨

〇鎌倉の休日の恐怖体験、首だけの蛇と骸骨

 「北鎌倉で降りて歩いてみませんか」なんていう歌詞がありましたね。「源氏山から北鎌倉へ、あの日と同じ道程で」なんていう歌詞もありました。

 北鎌倉駅前は、鎌倉駅前とは全く違って、ひっそりと静まり返ったところです。列車が到着すると、観光客がたくさん降りてきますが、目指すのは神社仏閣なので、たいてい裏側の出口から出て、円覚寺明月院方面へと向かいます。駅前には、派手なカフェやレストランや土産物屋なんかは、ほとんどありません。閑静な街並みを維持する努力があるのでしょう。

 しかし、昆虫記者一行は、駅の目の前の円覚寺には行きません。すぐ近くの明月院にもいきません。縁切寺東慶寺になど、絶対行きません。足を延ばして建長寺にも行きません。

 なにせ、狙いはイモムシ、毛虫ですから。どうしてこうなったかと言うと、イモムシ専門家のイノウエケイコさんが、旅に参加しているからです。

 それはそれは、恐ろしい、おどろおどろしい、イモムシ、毛虫旅になることが予想されますね。

 ということで、最初の画像は、クヌギの木の洞から顔を出したアオダイショウです。

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木の洞から顔を出すアオダイショウ。地獄の門番のようです。

「うわー、やめてくれー」という悲鳴が聞こえてきます。せっかく読者になってくれた人々が雪崩を打って、あるいは潮が引くように、去っていく様子が目に浮かびます。

 これもみな、イノウエケイコさんのせいです。イモムシ、毛虫を見ると鳥肌が立つという人は「ここで引き返した方が身のため」という警告ですね。

 閑散とした北鎌倉駅前から、静かな山道へと分け入っていきます。

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閑散とした北鎌倉駅

 するとすぐに現れたのは、どくろ顔のヒロバトガリエダシャク幼虫。ここから先は危険という表示ですね。イノウエケイコさんのようなエキスパートが一緒でないと、立ち入り禁止の危険地帯ということです。

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どくろ顔のヒロバトガリエダシャク幼虫

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気の弱い人は帰れと威嚇するヒロバトガリエダシャク

 今ならまだ引き返せます。気の弱い人は、今からでも駅裏に回って、円覚寺明月院に行きましょう。

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円覚寺には行きません。

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明月院にも行きません。

 しかしイノウエさんは前進します。すると、頭に血痕のついた黒い毛虫が現れました。ヒメヤママユの若齢幼虫です。

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頭に血の赤がにじむのはヒメヤママユの若齢幼虫

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この時期を過ぎるとただの緑色の毛虫になってしまうヒメヤママユ

 ミズキの葉を巻いていたのは、キアシドクガの毛虫幼虫。

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ミズキに多いキアシドクガ幼虫。1本の木に百匹ぐらいいることも。

 せっかく鎌倉に来て、おしゃれなカフェも、土産物屋も、なーんにもない山道で、毛虫を撮影する人々って、どうなんでしょう。

 キアシドクガにカメラを向けているのがイノウエケイコさんです。その後ろで、カメラ操作など指導しているのが、昆虫写真家の森上信夫さんです。

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イノウエケイコさんと森上信夫さん

 その後も次々と、イノウエさんにとっては可愛い、一般人にとってはおぞましいイモムシ、毛虫が次々に登場しました。

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オオノコメエダシャクの幼虫

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シャクガの仲間は歩かせれば分かるそうです。

 

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たぶんヒメノコメエダシャクの幼虫

 

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オカモトトゲエダシャクの幼虫

 

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チャバネフユエダシャクの幼虫

 

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たぶんヒロオビトンボエダシャクの幼虫

 

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フクラスズメの幼虫

 

 最後は、お口直しに、ちょっと素敵な蝶で締めましょう。エノキの若葉に擬態していると思われるアカボシゴマダラ春型の終齢幼虫です。

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アカボシゴマダラ春型の幼虫はエノキの若葉に擬態

 春型幼虫は若葉色にほのかにピンク色を乗せて、芽吹いたばかりの葉に体色を合わせています。アカボシゴマダラは成虫の蝶も、春型と夏型で別の種類のように、色合いが違いますね。

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アカボシゴマダラ成虫の春型(上)と夏型(下)。別の種類のように見えます。

 お口直しの蝶はいかがだったでしょうか。と言っても、すでにこの記事を見ている人はほぼセロのなっているのではないかと懸念されます。すべてイノウエさんのせいです。

 そしていよいよ、地獄旅も終わり、源氏山経由で寿福寺裏の出口、寿福寺トンネルへ。

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地獄門のような寿福寺トンネル

 まさに地獄旅にふさわしい、地獄門のような出口ですね。裏側には、鎌倉時代の墓である「やぐら」と思われる穴が開いていました。

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寿福寺トンネルを抜けると地獄旅も終わり。

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トンネルの裏側には鎌倉時代の墓「やぐら」らしきものが。

 ここを過ぎると、鎌倉駅はすぐそこ。普通の人々の明るく楽しい世界が待っています。