シンガポールの虫旅4日目は、決死の登山。なんて、嘘です。シンガポールに山なんてあるわけないですね。でも、一応現地日本人の間で「山」と呼ばれているのが、最高峰のブキティマ山です。標高はわずか163メートルで、シンガポール人はだれもこれを山とは思っていないでしょう。200メートル以上の高層ビルの多いシンガポールでは、ビルの上から頂上を見下ろせてしまうかも。
ブキティマのブキは丘の意味なので、実態は小高い丘ですね。では、ブキティマの丘に登ってみましょう。
MRTダウンタウン線のビューティーワールド駅で降りると、ブキティマまでは歩いて10分ほどです。この駅が出来たのは2015年のこと。それまではブキティマに行くのはバスを乗り継いだりと、非常に面倒でした。交通は便利になったし、自然豊かないいところなので、みなさん是非行きましょう。などと呼びかけても、日本人はほとんど行きません。なぜでしょう。それは、何もないからですね。
でも、虫はそここそいます。その上今回は、バードウォッチャー憧れの「火の鳥」アカショウビンとか、天然物スッポンとか、色々面白いものに出会いました。「何もない」かもしれないけれど、「何か面白いものに会える」かもしれないブキティマです。
まず、斜めに45度傾いたような、ブキティマ駅出入口の変な形に注目です。駅前の植え込みには、キバラタイヨウチョウというきれいな鳥。さすが南国です。
ブキティマ山に向かうと、すぐにサルの群れが現れました。
廃線になったマレー鉄道のガードをくぐると、もうブキティマ山入口です。
まず小さなカマキリを発見。小さな卵嚢はこのカマキリのものかもしれません。
次に現れたのは、アオバハゴロモの巨大版。モンシロチョウぐらいの大きさがありますね。
道は舗装部分が多くて、歩きやすいのですが、健康運動好きの華人たちが、例の後ろ歩きで坂を下りてくるので、衝突事故に注意しましょう。
そして、あっという間に頂上。さすがはブキ、丘です。「登頂!」という達成感は全くありません。
遠足みたいなグループも多いです。でも、こんな丘登りでは、子供たちの体力増進にはつながりそうにないですね。
頂上にはテリを張っている蝶が何種類か。忙しそうに飛び回るコモンタイマイは例によってピンボケに。きれいに撮れたのは、じっとしているコミスジの仲間ぐらいです。
下りは、左側の脇道のトレイルに入ります。その先には、ちょっと面白いものがあるのです。それは、マレーシアから水を輸入するための巨大水道管。水資源の乏しい島国シンガポールは、毎年大金を払って隣国マレーシアから水を買っているのです。
そんな貴重な水ですから、マレーシアからの水道管は地中にあるか、鉄条網などで厳重に守られている場所が多いのですが、ここだけはなぜか、地上にドドーンと鎮座しているのです。
ひやりと冷たい巨大水道管の上に乗って、弁当を食べるのは気持ちのいいものです。しかし、大事な水道管をむき出しにしていていいのでしょうか。テロ攻撃の目標になったりしないのでしょうか。
どこからか突然、テロ対策部隊が現れて「日本人昆虫記者、水道管テロ容疑で逮捕」なんてことになったりしないのでしょうか。ちょっと不安です。
ブキティマ山は、そこそこ人出があるのですが、この水道管のある草原は、見渡す限りだれも歩いていません。なので、ブキティマ山より虫が豊富です。
タテハモドキなどの蝶を一通り撮ったら、昔通った帰り道を探します。しかし、何ということでしょう。行く手はバリケードでふさがれて、その中では大規模工事が進行中なのでした。この荒れ野のような場所を、小ぎれいな公園にでも作り変えるのでしょうか。荒れ野は荒れ野のままの方が虫が多くていいのですが、一般大衆はそうは思わないでしょう。
工事のせいで、帰り道はふさがれいます。でも工事現場のすぐ脇に、いい感じの林道が口を開いていました。横に小川が流れていて、いかにも虫がいそうな林道です。方向的にも、駅方面に戻れそうです。昆虫記者がそこに吸い込まれたのは当然と言えます。
しばらく林道を進んでいくと、バチャバチャと激しい水音。「もしかして、美女軍団の秘密の水浴場でもあるのか」と期待して、足音を忍ばせて近づきます。すると、そこにいたのは、美女軍団よりも魅力的なバードウォッチャー憧れの「火の鳥」アカショウビンでした。
激しい水音は、アカショウビンが狩りのため、水中に飛び込む音だったのです。アカショウビンは狩りに夢中で、近づいても逃げようとしません。10分ほど、のんびりと狩りの様子を眺めていたのですが、1匹も魚を捕まえることができません。ただ遊んでいるのか、最低の技量のアカショウビンなのかのどちらかでしょう。
いつまで待っても狩りに成功する気配がないので、見捨てて先に進むことに。しかし、そこで、想定外の襲撃に遭うことになるのですが、長くなったので、今回はこのあたりで打ち切りに。次回に期待をつなぐいい終わり方ですね。