虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

山岳民族の待ち伏せに遭遇

 マレーシア・キャメロンハイランドの蝶探しもいよいよ佳境に入ります。イスカンダルの滝からさらに、くねくね道を車で上ったところにあるナインティーン(19)マイル。観光案内に載っている可能性はほぼゼロです。バス停の隣に小さな地元の売店があるだけで、あとは何もないところです。でも虫はいます。恐らく、外国人でわざわざここを訪れるのは、虫好きの変な日本人だけでしょう。私も変な日本人の一人なので、ここも外せません。
 
 見るからに蝶がいそうなところです。
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 バス停の裏手に山岳民族オランアスリの村があり、この村の中を通る道を沢沿いに奥へ、奥へと進んで行きます。命知らずの日本人虫マニアは、勝手にジャングルに分け入って行きますが、臆病者はオランアスリにわずかばかりの金を渡して、道案内を頼みます。私も臆病者の一人なので、オランアスリの後をついて行きます。
 
 松本清張のミステリー「熱い絹」にサカイ族として登場するキャメロンハイランドのオラアスリは、かなり恐ろしい人々で、蝶採集ツアーに参加した日本人青年を、山刀で惨殺します。しかし、それも昔の話(だと信じたい)。私が出会ったオランアスリはみな、素朴で親切で優しい人々でした。
 
 ジャングルに入ると、いろいろな蝶が飛び交っていますが、いい写真はなかなか撮れません。私の腕が悪いせいもあります。しかし最大の理由は、オランアスリの網が、シャッタースピードよりも素早く、蝶を捕らえてしまうからです。絶好の採集ポイントには必ずと言っていいほど、虫網を持って待ち伏せしているオランアスリの姿があります。
 
 オランアスリが捕まえたキシタアゲハ。これもワシントン条約で保護されています。
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 オオゴマダラの近縁種、ホソバオオゴマダラ
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 そして、あの憧れのアカエリトリバネアゲハ♀も、あっという間にオランアスリの網の中に収まってしまいました。
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 よだれが出るほど美しい。バタフライガーデンなどの施設に売られていくそうです。でも外国人には売ってくれません。ワシントン条約は厳しいですね。
 
 何とかオランアスリの網が伸びる前に撮影できたヒメゴマダラです。
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