虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑰パシリスの休日のお供は蛇とカブトガニとサイチョウ・続き

 シンガポールのパシリス・ビーチの続きです。前回の題名にサイチョウとありながら、サイチョウが出てこなかったので詐欺だと思って、JAROに連絡した人もいるかもしれませんね。手が後ろに回るのは嫌なので、前回載せ忘れていたサイチョウです。

f:id:mushikisya:20200211102704j:plain

シンガポールの公園に野生のサイチョウ現る

 あの「ガガーン」のマングローブ散策路閉鎖のショックから、いまだ立ち直れず、散策路をとぼとぼと引き返した時のことでした。水路の小さな橋の上に張り出した枝の上に、カラスを何倍にもしたような巨大な鳥がとまっているではありませんか。

f:id:mushikisya:20200211102839j:plain

左の木の枝の上にサイチョウがいます。

 「サ、サ、サイチョウ」。そうです。何と近代都市国家シンガポールの公園に、野生のサイチョウが来ていたのです。ここは動物園とか、鳥類園ではありません。ただの海辺の公園です。ごくごくまれに、シンガポールでもサイチョウを見かけることがあると聞いてはいたのですが、本当に出会えるとは思っていませんでした。キタカササギイチョウというサイチョウの中ではいちばんありきたりの種類ですが、目の前で見ると迫力です。

 

 左の木の上にいます。至近距離です。じりじりと近づきながら写真を撮ります。

f:id:mushikisya:20200211102958j:plain

イチョウは堂々たる鳥です。近づいても逃げる気配を見せません

f:id:mushikisya:20200211103151j:plain

頭の上の際の角のような付属品がサイチョウの名前の由来です。

 近付いていくと、橋の右側の木に飛び移りました。遠くに行かず、色々なポーズをとってくれるサービス精神あふれるサイチョウです。

f:id:mushikisya:20200211103444j:plain

右側の木に飛び移ったサイチョウ

f:id:mushikisya:20200211103824j:plain

白いフワフワの羽毛に覆われた太い足も立派です。

f:id:mushikisya:20200211103913j:plain

こっちを向いてと頼むと、向いてくれます。

f:id:mushikisya:20200211104014j:plain

口を開けてと頼むと、開けてくれます

f:id:mushikisya:20200211104042j:plain

でも口を開けるとちょっと怖い。噛みつかれたらかなり痛そう

 5分か10分ほど、撮影に付き合ってくれたやさしいサイチョウでした。

 

 マングローブ林の遠景はこんな感じです。散策路が閉鎖されていなければ、もっと色々見られたのにと、つい欲張りな願望を抱いてしまいます。

f:id:mushikisya:20200211104419j:plain

水路を囲むマングローブ

f:id:mushikisya:20200211104527j:plain

サギの姿があちこにに見られますが、サイチョウと比べると迫力は今一つ。

 パシリスの鳥がサギだけだったら、本当に詐欺になるところでした。あぶない、あぶない。

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑯パシリスの休日のお供は蛇とカブトガニとサイチョウ

 シンガポールの海辺と言えば、セントーサかイースト・コースト・パークと答えるのは、素人と言うか、まっとうな常識人ですね。昆虫記者のお勧めは、チャンギ空港の北西のパシリス・ビーチです。でもカリフォルニアのビーチのような素敵な雰囲気を期待して行くと、「騙された」と嘆くことになります。おしゃれな店もないし、海の水もエメラルドブルーとはとても言えません。それどころかビキニ姿のピチピチギャルなんて1人もいません。

 でもここには、先進都市国家シンガポールとは思えない自然が残されているのです。駅近のお手軽旅なのに、南国のマングローブの森に囲まれた秘密の海辺の雰囲気が味わえるのです。

f:id:mushikisya:20200209143336j:plain

こんなカブトガニとかいるはずです。

 

 それではマングローブ林に入ってみましょう。

f:id:mushikisya:20200209142849j:plain

パシリスのマングローブ林の中の散策路

 素敵な散策路ですね。この先には入江が広がっていて、水辺の生物がどっさり見られるはずなのです。

 

 ところが、何と、ガガーンな展開。

f:id:mushikisya:20200209143218j:plain

マングローブ林の散策路は、ここからが見どころという地点で閉鎖です。

 またしても工事中で閉鎖です。先日のバタフライ・トレイル@オーチャードでも、一番の蝶の名所が巨大工事の真っ最中で立ち入り禁止になっていたので、連日のガガーンな展開です。

 

 しかし落ち込んでばかりいても明るい未来は開けないので、周囲を丹念に見回すと、かわいい蛇がいました。

 

 パラダイススネークという楽しそうな名前の蛇です。あとで調べて分かったのですが、このヘビはたぶん、パラダイストビヘビとも呼ばれていて、肋骨を広げて体を扁平にして、ムササビのように空を滑空することができるのです。

f:id:mushikisya:20200209150359j:plain

空飛ぶ蛇、パラダイススネーク。飛ぶところを見たかった。

 うーん、飛ぶところを見てみたかった。しかし、ほとんど人に害はないとはいえ、一応毒蛇のようなので、つかまえて飛ばせてみるなんてことはしない方がいいでしょう。

 

 さらに、水中でじっとしているヘビを見つけました。ドッグフェースド・ウォータースネークというミズヘビの仲間です。汽水域に棲んでいて海を渡ることもあると言います。ウミヘビと陸上の蛇の中間みたいなやつです。

f:id:mushikisya:20200209150554j:plain

水中でじっとしているミズヘビ。

 トビハゼも何匹かいました。こいつらがミズヘビの餌食になるのでしょう。

f:id:mushikisya:20200209150659j:plain

トビハゼ

f:id:mushikisya:20200209150730j:plain

 

 海辺に出ました。岸辺までマングローブ林が張り出していて、ネーチャー感があふれています。

f:id:mushikisya:20200209150810j:plain

マングローブに囲まれたパシリスビーチ

 たまに地元の家族連れが遊びにきています。

f:id:mushikisya:20200209150900j:plain

 

 そして波打ち際にカブトガニの姿。

f:id:mushikisya:20200209150936j:plain

いました、カブトガニ

 でも残念、ひっくり返してみたら、最近お亡くなりになっていたようです。

f:id:mushikisya:20200209151025j:plain

 

 海岸にはマングローブの実がたくさん流れ着いています。木の上から落ちると、泥に突き刺さって、そこから新しいマングローブが芽生えると言われているあの実ですね。

f:id:mushikisya:20200209151106j:plain

マングローブの実は本当に地面に突き刺さるのか

 試しに上から落としてみました。すると、ブッスリ。

f:id:mushikisya:20200209151139j:plain

浜辺に突き刺さった(ように見える)マングローブの実

 なんてうまくいくはずはありません。そんな簡単に砂浜に突き刺さるわけはありませんね。無理やり突き刺したやらせ写真です。

 

 

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑮マリーナベイサンズの庭

 MRTのベイフロント駅前にそびえる巨大ホテル、マリーナベイサンズはシンガポールのランドマークとしてすっかり定着しましたが、その庭とも言うべき巨大植物園、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの知名度は低いかもしれません。101ヘクタールもある広大なこの植物園は2012年にオープンしたばかりで、まだまだ昆虫濃度は低いですが、熱帯のシンガポールですから、いずれは昆虫天国になることでしょう。

f:id:mushikisya:20200119153328j:plain

マリーナベイサンズの写真は海側から撮ったものが多いですが、ガーデン側から撮る写真の方が南国らしくていい感じです。ドラゴンフライ・レイクのトンボのオブジェが虫好きを引き付けます

f:id:mushikisya:20200119153644j:plain

ガーデンの木々を前景に撮ったマリーナベイサンズ

 ここを紹介するからには、ベイサンズに泊まったのだろうと思う人もいるかもしれませんが、そんな金銭的余裕はありません。ただ見上げるだけです。

 このあたりはかつては昆虫記者の庭のようなものでした。シンガポール特派員時代、休日にはよく虫探しに来たものでした。当時はまるでジャングルのようなところで、ふんだんに虫がいて、時々毒蛇のコブラに遭遇したりする楽しくもあり、恐ろしくもある場所でした。

f:id:mushikisya:20200119153814j:plain

今はまだ虫が少ないガーデンズ・バイ・ザ・ベイですが、いずれ昆虫天国になるでしょう。小さなハゴロモを見つけました

f:id:mushikisya:20200119153925j:plain

シンガポールではよく見かけるハゴロモですが、近寄って見ると意外にきれいです

 今ではそのジャングルが一掃され、ベイサンズとガーデンズ・バイ・ザ・ベイになっています。クルーズ船センターに至る海岸線は、まだ植林の途中で、更地のままのところも多く見られます。コブラはいなくなったでしょうが、虫や鳥、その他の生き物も激減したと思われます。世界中から訪れる観光客にとっては喜ばしく、昆虫記者にとっては悲しい現実です。

f:id:mushikisya:20200119154143j:plain

ガーデン内にはこんな芸術作品も

f:id:mushikisya:20200119154224j:plain

ガーデン内を歩く観光客はほとんどいません。地元の幼稚園の遠足でしょうか。

f:id:mushikisya:20200119154410j:plain

ドラゴンフライ・レイクには葦原のような環境も整備されているので、そのうちトンボも増えるでしょう

 

f:id:mushikisya:20200119154624j:plain

まだトンボも多くはありません。

 でもガーデンズ・バイ・ザ・ベイという新たな緑のオアシスを作ってくれたことは、せめてもの慰めです。熱帯の昆虫はしぶといですから、いつの日か、かつての繁栄を取り戻すことでしょう。

f:id:mushikisya:20200119154929j:plain

ガーデン内には巨大なグリーンハウスがあります。

f:id:mushikisya:20200119155011j:plain

対岸に見える巨大観覧車、シンガポールフライヤー

 新しい植物園より、街中の空き地の方が管理が行き届いていない分、虫の姿が多く見られます。

f:id:mushikisya:20200119155219j:plain

空き地にいた虫。たぶんカッコウムシの仲間

f:id:mushikisya:20200119155456j:plain

空き地にはチビフタオチョウの幼虫もいた

f:id:mushikisya:20200119155601j:plain

シンガポールのアオスジアゲハの幼虫は、野生のシナモンの葉を食べる

f:id:mushikisya:20200119155735j:plain

バナナの葉を巻いていたのは、たぶんバナナセセリの幼虫

 でも、そんなただの空き地を散策するのは、飼い犬の用足しを目的とした人ぐらいしかいません。まして、そんなところで虫を探す怪しい人物は昆虫記者だけです。

台湾総統選で蔡が圧勝。中国人観光客急減で苦境の台湾は日本人を待っています。

 11日に行われた台湾総統選挙で、現職で民主進歩党民進党)の蔡英文氏が、圧倒的な勝利を収めました。台湾の政治に介入する権利も力もない昆虫記者ですが、社内の知人の台湾人女性の陳さんが蔡氏を応援していたので、この結果は非常に嬉しいです。写真部記者、つまりカメラウーマンの陳さんは、わざわざ蔡氏に1票を投じるために、里帰りしていたのですから、蔡氏の当選で、陳さんにも「おめでとう」と言えるのです。

 いやいや、良かった。これで心置きなく、陳さんの台湾土産を受け取れます。蔡氏の当選より、本当はお土産の方が嬉しかったりして。「陳さん、お土産待ってまーす」って、不謹慎ですね。陳さんは、遊びに行ったわけではないのです。真剣に台湾の将来を考えて、1票を投じに行ったのです。 

f:id:mushikisya:20200113110248j:plain

2011年に行った台湾・高雄の蝶の谷として有名な茂林地区の紫蝶幽谷。ルリマダラの仲間の集団越冬地として有名です。ルリマダラの飛翔姿をご覧ください。

 昆虫記者はノンポリではありますが、蝶の国であり、昆虫大国である台湾が、いつまでも自由と人権を尊重する民主主義の国であり続け、虫撮り旅に支障が出ないことを望んでいます。昆虫趣味のような、国家目標に全く貢献しない活動は、共産主義下では迫害されかねないので、中国と距離を置く民進党政権の方が、親中派の国民党政権よりも、安心できるというわけです。

 中国では日本人が何人も、はっきりした理由も明らかにされないまま、拘束されていますよね。昆虫記者なんていう怪しい奴は、常に拘束の恐れがあります。カメラを3つも4つも持って、一般人が入り込まないような、森や原野に踏み込んでいくのは、相当に怪しい奴です。そんな場所に軍事機密が隠されていたら、スパイ容疑がかけられるでしょう。台湾がそんな場所になってほしくないですよね。

f:id:mushikisya:20200113110938j:plain

紫蝶幽谷はこんなところ

f:id:mushikisya:20200113111029j:plain

紫蝶幽谷のルリマダラの群れ

f:id:mushikisya:20200113111136j:plain

画面中に何匹のルリマダラがいるでしょうか。

 中国政府は、中国本土、香港、台湾が「一つの中国」だと常に主張、台湾にも香港と同じ「一国二制度」を受け入れるよう求めています。それはつまり、いずれは台湾も共産主義の中国の一部になるべきだという主張ですね。その上、台湾が独立を企てるならば、統一のため武力行使も辞さないという立場を堅持しています。

 蔡氏は、現在の香港市民の民主主義支持の抗議行動について、「一国二制度」が失敗だったことを示していると分析。台湾は一国二制度の受け入れを拒否すると宣言しています。長年民主主義の下で自由を謳歌してきた2400万人近い台湾の人々は、常に共産主義の中国に飲み込まれる恐怖に直面しているのです。対中関係は台湾の行く末を左右する問題で、その対中関係が最大の争点になった台湾総統選に、市民が強い関心を持つのは当然なのです。

 

f:id:mushikisya:20200113111324j:plain

カメラの前を飛び交うマダラチョウの仲間たち

 国民党の総統候補の韓国瑜氏は、中国との経済・貿易関係の拡大によって、台湾経済を活性化させると訴えていましたが、中国経済への依存度が大きくなればなるほど、政治的にも中国の影響力が大きくなるのは必然。その端的な例が、2019年8月からの台湾への個人旅行渡航許可の停止です。中国はそれ以前から、蔡政権下の台湾に経済的圧力をかけており、それが蔡氏と民進党の支持率低迷を招いていたのです。それなのに香港情勢を背景に蔡氏が支持を回復してきたことが、渡航停止という強硬策につながったのかもしれません。

 台湾の民進党政権が独立志向を持っていることを、中国政府は渡航停止の理由に挙げています。これを受けて中国から台湾への旅行者は、同年9月には前年同月比6割減になったとされています。

 2014,15年には台湾を訪れた中国人観光客は、300万人以上で、外国人観光客全体の40%以上を占めていました。つまり中国政府は、台湾の外国人観光客を一気にほぼ半減させる力を持っていたということです。中国に経済的に過度に依存するということは、こうしたリスクを伴うということです。

f:id:mushikisya:20200113111543j:plain

ツマムラサキマダラの飛翔

f:id:mushikisya:20200113111612j:plain

リュウキュウアサギマダラの飛翔

f:id:mushikisya:20200113111701j:plain

コモンマダラの仲間

f:id:mushikisya:20200113111732j:plain

ヒメアサギマダラ

 観光客の急減は、蔡政権にとっては大打撃です。総統選挙や立法院(議会)選挙で、独立志向の蔡氏と与党民進党を敗北させる要因になってもおかしくない状況でした。

 しかし、今回の選挙では、「今日の香港は明日の台湾」かもしれないという危機感が追い風となって蔡氏が勝利しました。

 今後も蔡政権への中国からの圧力は続くでしょう。中国人観光客が急減する中で台湾にとって希望の星は、日本人観光客です。2019年には前年比5%以上増加して、初めて200万人の大台に乗ったのです。

 みなさん、是非台湾に行きましょう。東日本大震災の際の、台湾からの官民合わせて200億円超という怒涛のような義援金を忘れてはなりません。台湾の経済規模から見ると、この額は、群を抜いて世界トップの額です。この台湾からの親愛の情に報いなければなりません。

 昆虫記者は去年を含め、既に3回台湾虫旅を敢行していますが、今年もまた行こうと思っています。台湾からの訪日観光客は年間500万人前後。日本から台湾への観光客も、是非500万人を達成したいところですね。

子年も新年の虫撮り初めは丑。毎年恒例ホルスタイン柄のチャバネフユエダシャクです

 新年の書初めならぬ虫撮り初めは、子年でもやっぱり昆虫界のホルスタインこと、チャバネフユエダシャクの♀ですね。特に年明けは毎年の恒例行事が大切です。この季節に見ごたえのある虫と言えば、彼女しかいないですね。

 

 そこで毎年恒例の生田緑地で彼女を探します。「今年も会えるかなー、冬の日出会った女の子♬」と、太古の昔のグリコのCMソング「黄色い麦わら帽子」の替え歌を口ずさみながら、軽快に丘を登っていくと、やっぱり待っていてくれました。待ち合わせ場所に彼女を見つけた時のときめきを何と言い表せばいいのでしょうか。

f:id:mushikisya:20200105122028j:plain

子年も虫撮り初めは丑。ホルスタイン柄のチャバネフユエダシャク♀です

 人間界では、もはやそんなときめきを味わえない昆虫記者は、昆虫界の美女との出会いに感動を求めます。現実逃避と言われようが、気色悪いと言われようが、もはやこの道を突き進むしかありません。

f:id:mushikisya:20200105122157j:plain

木柵の多い公園はフユシャクがみつけやすい

f:id:mushikisya:20200105122350j:plain

f:id:mushikisya:20200105122503j:plain

外敵に見つかりにくい木に移動させてやりました。しっかり産卵してもらわないと、来年子孫に会えないので

 冬の彼女は、麦藁帽をかぶって日焼けした妹みたいな女の子とは違って、色白で黒髪の豊満な美女です。ホルスタイン柄であるだけでなく、このでっぷりしたスタイルはまさに乳牛ですね。

 

 今年見つけたチャバネフユエダシャクの♀は2匹。両手に花状態です。

f:id:mushikisya:20200105122729j:plain

チャバネフユエダシャク♀、2匹目はこんなところにいました。

f:id:mushikisya:20200105122834j:plain

1匹目よりやや小ぶりです

f:id:mushikisya:20200105122923j:plain

 フユシャクの♀は、蛾のくせに羽が退化していて飛べません。特にチャバネフユエダシャクの♀は、超ぽっちゃり系の体型なので、跳び上がることもできないでしょう。でも、飛んでる女より、おしとやかな女性の方がいいですよね。

 

 チャバネフユエダシャクよりずっと小柄な彼女も見つけました。こちらはおしゃれで小さな緑の羽を持っているので、イチモンジフユナミシャクの♀ではないかと思います。

f:id:mushikisya:20200105123012j:plain

緑色の小さな羽を持ったフユシャク。イチモンジフユナミシャクの♀でしょう。

f:id:mushikisya:20200105123113j:plain

 

 小柄な上に地味なフユシャク♀もいました。地味系の彼女も味があっていいですね。シロオビフユシャクかウスバフユシャクの♀ではないかと思われます。

f:id:mushikisya:20200105123153j:plain

フユシャク♀はこんなところにいることも

f:id:mushikisya:20200105123259j:plain

シロオビフユシャクかウスバフユシャクの♀と思われます

f:id:mushikisya:20200105123344j:plain

 

 ♀は羽がないか、小さな飾りのような羽を付けているだけで可愛いのですが、♂は普通の羽の、あまり取り柄のない蛾です。美女と野獣的な組み合わせですね。

 

 見たくないかもしれませんが、近くにいた♂たちも紹介しておきます。

f:id:mushikisya:20200105123412j:plain

たぶんチャバネフユエダシャクの♂

f:id:mushikisya:20200105123449j:plain

たぶんイチモンジフユナミシャクの♂

f:id:mushikisya:20200105123541j:plain

シロオビフユシャクの♂

f:id:mushikisya:20200105123630j:plain

ウスバフユシャクの♂

f:id:mushikisya:20200105130204j:plain

クロオビフユナミシャクの♂

 汚い男たちを見たあとのお口直しに、鳥です。エナガはいつ見てもぬいぐるみのようで可愛いですね。

f:id:mushikisya:20200105125554j:plain

ぬいぐるみのようなエナガ

f:id:mushikisya:20200105125621j:plain


 

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑭繁華街オーチャードロードは蝶の道?

 シンガポール最大の繁華街と言えばオーチャードロードです。昆虫記者とは全く縁のない高級ブランドショップや、高級ホテル、高級レストランなどが立ち並ぶ通りですが、そんなところで昆虫記者が何をやっていたかというと、やっぱり虫探しです。こりないやつですね。

f:id:mushikisya:20200101212019j:plain

ドービーゴート駅前のジャイアントミルクウィードにいたカバマダラの幼虫

 繁華街に虫はいないと思うのは、日本の常識にとらわれた素人と言わざるを得ません。熱帯の先進都市国家シンガポールは、そのオーチャードロードに、蝶の道「バタフライ・トレイル@オーチャード」を作ってしまったのです。

 ガーデンシティーとして名高いシンガポールですから、繁華街にも木々や草花の緑が多く、公園も各所に配置されているのですが、そこに蝶の幼虫の餌となる植物や、成虫の蜜源となる植物を植えることで、買い物客やグルメ客のみならざず、蝶まで呼び込もうというのです。

f:id:mushikisya:20200101212208j:plain

オーチャード周辺の公園にはヘリグロホソチョウの姿も

 買い物好きの奥様や彼女とオーチャードに行かざるを得なくなった虫好きの夫や彼氏(そんなケースはほとんどないとは思いますが)でも、オーチャードを楽しむことができるとは、何と素晴らしいことでしょうか。

 奥様の買い物に付き合わされてうんざりとか、彼女が買い物をしている間、待ち合わせ時間まで何もすることがなくて退屈で死にかけるとか、そんな不毛な事態はなくなるのです。

f:id:mushikisya:20200101212332j:plain

道端の花に来たカバマダラ

 オーチャード駅からドービーゴート駅までの通り沿いに6カ所も蝶のホットスポットが設けられているので、蝶や幼虫のイモムシを探すのに夢中になって、奥様や彼女との待ち合わせ時間に遅れて離婚や別れ話に発展する可能性すらあるのです。何と素晴らしいことでしょう。

 銀座、新宿、渋谷の繁華街もこんなだったらいいですね。高度成長期が終わって、成熟期に入った国は、開発ばかりでなく、自然の再生にも目を向けてほしいものです。

f:id:mushikisya:20200101212433j:plain

カバマダラ幼虫(上)とオーチャードロードを走るバス

 地球のキャパシティーに限界がある以上、無限の経済成長などあり得ないし、不可逆的な状況まで環境を損なうような成長は、もはや成長とは言えませんね。そろそろ、経済成長や物の豊かさよりも、幸福度とか、環境の豊かさとかを重視する分岐点に人類はさしかかっているのかもしれません。

 ということで、昆虫愛好家としては、都会にも自然を取り戻そうという、バタフライ・トレイル@オーチャードのような取り組みを大いに歓迎したいと思います。

f:id:mushikisya:20200101212610j:plain

賑やかなオーチャードロード

f:id:mushikisya:20200101212641j:plain

高島屋が入るニーアンシティーの裏側にも緑が広がっている

f:id:mushikisya:20200101212905j:plain

オーチャード駅直結の巨大ショッピングセンターION(アイオン)の近くにも蝶のホットスポットがある

f:id:mushikisya:20200101213219j:plain

街路樹にこんなカラフルなトカゲがいるのも餌になる虫がいるお陰



 荷物持ちのために妻の買い物に付き合わされている時でも、いつ何時意外な虫が飛び出してくるか分からないので、カメラや虫網は手放せないというような、そんな世界になったら非常に嬉しいと思う次第です。

 

新年の皇居にナポレオンが凱旋って何のこと。ナポレオンハットのヨシガモのことです

 新年明けましておめでとうございます。皇居は新年を迎えるのにふさわしい場所の1つですね。と言っても、人込みの苦手な昆虫記者は、一般参賀に行くこともできず、お堀のヨシガモのナポレオンハットを眺めて新年を祝います。

 都心部で確実にヨシガモが見られる所と言えば、やっぱり皇居です。こんな水鳥の楽園が都心にあるなんて、本当にありがたいですね。

 最近はジョガーに占拠された感のある皇居一周コースですが、ジョガーの皆さんに邪魔にされながら、のんびり水鳥を眺めながら歩くのも悪くないものです。

 

 「カモなんて、どれも同じ顔じゃないか」と思っている人もいるかもしれませんね。ヨシガモはナポレオンハットなんて言うけど、「どこがナポレオンなのか全然分からない」という人もいるでしょう。

 ではこの姿を見てみましょう。確かにナポレオンハットですね。

f:id:mushikisya:20200101180226j:plain

これぞナポレオンハットという姿の皇居のヨシガモ。格好いい凱旋姿ですね。

 えっ、どこが?という人は、ネットで帽子をかぶったナポレオンの正面顔を検索してみましょう。

 その後で最初にアップしたヨシガモ♂の頭の写真を見てみましょう。黒いくちばしと、首の後ろの黒い寝ぐせのような模様は、ナポレオンの帽子の両端の尖がった部分そっくりではありませんか。そして、くちばしから首の後ろまでの微妙なカーブもまさに帽子そのもの。カーブの下にナポレオンの顔を描けば、ナポレオンその人になりますね。

f:id:mushikisya:20200101180526j:plain

 このヨシガモは凱旋濠にいたので、まさにパリに凱旋したナポレオンです。

 

 皇居でヨシガモが多く見られるのは、この凱旋濠の隣の桜田濠です。水深が浅くて、水が澄んでいて、水草が多いところが好みのようです。今回はオスメス合わせて20~30羽くらい見られました。

f:id:mushikisya:20200101180658j:plain

桜田濠のヨシガモ。羽を広げているのは♀です

f:id:mushikisya:20200101180748j:plain

f:id:mushikisya:20200101180855j:plain

桜田濠ではヨシガモオオバンが結構仲良く付き合っているようです

 今年は半蔵濠の北端のところにもヨシガモの群れがいたのですが、なんとその群れは♂が1羽だけで、あと10羽ほどは全部♀というハーレム状態でした。何とうらやましい光景なのでしょう。

f:id:mushikisya:20200101181014j:plain

後ろに♀の群れを引き連れる半蔵濠のヨシガモの♂。うらやましいハーレム状態

f:id:mushikisya:20200101181147j:plain

♀に囲まれて嬉しそうと思うのは人間の勝手な想像

 人間界だと、♂の方から♀にちょっかいを出すことが多いですが、この群れでは、♀が次々と♂のところにやってきて、気を引いていました。これまたうらやましい。

f:id:mushikisya:20200101181326j:plain

♀にちょっかいを出されて嬉しそうと思うのも人間♂のかってな妄想

f:id:mushikisya:20200101181452j:plain

♀に言い寄られた幸せそうと思うのも人間♂のひがみ

f:id:mushikisya:20200101181555j:plain

 

 英雄色を好むと言いますが、カモ界のナポレオンも、精力絶倫なのかもしれませんね。

 

 ここでは水草を主食にしているようですが、陸に上がって草の葉を食べていることもありました。

f:id:mushikisya:20200101181637j:plain

陸に上がって草を食べるヨシガモ。これでは葦ガモじゃなくて草ガモ

f:id:mushikisya:20200101181823j:plain

 

 カルガモコガモなど他のカモはあまりナポレオンには似ていないし、都心のあちこちにいるので、無視されがちです。その他大勢の悲しさですね。

f:id:mushikisya:20200101181943j:plain

一年中いるカルガモ

f:id:mushikisya:20200101182035j:plain

コガモの♂もちょっときれいな模様です。

f:id:mushikisya:20200101182509j:plain

コガモの群れは桜田濠の北端にいました