ウスバシロチョウの季節になりました。最近東京にも増えてきて、いるところには、たくさんいるのですが、食草のムラサキケマンを眺めても、幼虫は見かけませんよね。
それもそのはず。ウスバシロチョウの幼虫は、昼間は石や落ち葉の下にもぐり込むという、蝶の幼虫にあるまじき行動を取るのです。まるで、ヨトウガの幼虫のヨトウ(夜盗)虫のようです。
やっと先日、ムラサキケマンの根元の枯葉の下で、ウスバシロチョウの幼虫を掘り当てました。
やはり夜盗っぽい黒い衣装です。手に乗せて写真を撮ろうとすると、その動きがまた、蝶にあるまじきコソ泥のような敏捷さ。ピョンピョンと飛び跳ねるかのように、移動し、あっという間に手のひらから転がり落ちます。怪しいやつです。
しかし、よく見ると、黒い盗賊衣装の上に、きらびやかなネックレスのような模様があります。盗品の宝石を身に着けた夜盗というところでしょか。
自宅でプラケースにムラサキケマンを植えて、飼ってみました。昼間は地面にいて、夜な夜な草の上に這い上がり、ムシャムシャと葉を食べます。
ウスバシロチョウの仲間は、蝶の中では極めて珍しく、繭を作ることで知られていますよね。いったいどんな場所に繭を作るのか、気になるところです。
ウスバシロチョウの幼虫は、夜盗虫のような生活態度なので、たぶん落ち葉の陰かなんかで、人目を忍んで土色の繭を作るのだろうと思っていました。
ある夜、ムラサキケマンの茎を上った幼虫は、その場で動かなくなりました。翌日見てみると、その場所に、そこそこ立派な繭が。
緑の葉の中に、小ぎれいな繭。光に透かしてみると、繭の中に前蛹らしき黒い影が見えます。
5月になって、ウシバシロチョウの成虫が出てきました。
繭には脱出口が開いています。繭を開いてみると、蛹の抜け殻。
ところで、 エリックカールさんの超有名な絵本、「はらぺこあおむし」では、食いしん坊のイモムシが、ある日食事をしなくなり、繭(コクーン)を作り、繭の中から、美しい蝶が出てきます。「蝶は繭を作らないのでは」という多くの読者から寄せられた疑問に対し、エリックカールさんは、ウスバアゲハの仲間は繭を作ると説明しています。
「はらぺこあおむし」の主人公は、ウスバシロチョウだったのかも。でも、全然青虫じゃなくて、黒虫で、しかも夜盗のような生活。これではとても絵本の主人公にはなれないですね。