前回はカナムグラを食べるアカタテハを紹介しましたが、「キタテハの幼虫を探しに行ったのに、キタテハを見つけられずに、苦し紛れにアカタテハでごまかしたんじゃないの」と思っている人もいるかもしれません。
そんな汚名を着せられたままでは、居ても立っても居られないので、同じ草原にいたキタテハを紹介します。キタテハなんて、誰も興味を持たないし、だれも堂々と紹介したりしません。
でもそんな差別には断固反対します。キタテハだって、立派な蝶です。
カナムグラの茂みには、必ずと言っていいほど、キタテハの姿があります。トゲだらけのカナムグラとの連想で、キタテハが嫌われている可能性もないとは言えませんね。
幼虫もいました。蛹はいい加減なつくりの隠れ家の中にありますが、幼虫はこんな風に、堂々と葉や茎の上を歩いているのをよく見かけます。
トゲだらけで毒毛虫のように見えますが、そんな悪者ではありません。手乗りさせても大丈夫です。
トゲだらけのカナムグラにトゲだらけの毛虫。絶対に触りたくないたぐいの生物ですが、じっくり観察すると、なかなかに美しい毛虫です。
そして、この雑なつくりの隠れ家の中に蛹があります。
裏から覗いてみると。
葉を萎れさせるための若干の細工の跡がうかがわれますが、アカタテハの巣と比べると、巣とか、隠れ家とか名乗るのもおこがましいような、相当にいい加減な代物です。もう虎柄の羽の模様がうっすらと見えているので、羽化寸前です。
持ち帰る途中、車内で羽化してしまいました。
秋型らしいリアス式海岸のような羽ですね。