エロティックな虫と言えば、やっぱりこれ。ジャコウアゲハの蛹です。なまめかしい曲線と色合いと、ヒダヒダ。
臓物のようで気味悪いと思う人もいれば、妖艶な美女がしなをつくっているようだと思う人もいます。要は気持ちの持ちよう、思い入れ次第ということですね。「お菊虫」の呼び名も、そんな思い入れによるものでしょう。怪談「皿屋敷」の下女お菊が惨殺され、その亡霊が虫になったということですが、お菊虫はいずれ、きれいなジャコウアゲハになるので、亡霊と言うより、生まれ変わって天に昇っていく、すがすがしい後味のおとぎ話の主人公と考えた方が、気分は良好ですね。
でも、やっぱり何か色っぽい。
後ろ手に縛られた着物姿の「お菊」の亡霊と言われれば、そう見えないこともないです。
撮影場所は、自宅近くのジャコウアゲハの名所です。名所と思っているのは虫記者だけです。何の変哲もない、都心の遊歩道です。でも、都心でこれだけたくさんのジャコウアゲハの蛹がぶら下がっている場所は、あまりないので、やっぱり名所です。
ほとんどの人々は、お菊の存在に気付くことなく、通り過ぎていきます。
これだけ多いともう、亡霊という感じはしません。噛み捨てられ、壁に貼り付けられたチューインガムと間違われて、一斉撤去されないか心配になりますね。