フユシャクは時期がちょっと違うと、違う種類が見られるのですが、今回は圧倒的にクロオビフユナミシャクが優勢でした。「いた!」と思って駆け寄ると、どれもこれもクロオビフユナミシャク。いいかげんにしてくれ、と叫びたくなるほど、こいつばかりでした。以前来た時は、ナミスジフユナミシャクとウスバフユシャクばかりだったのに、時期が違うと、こんなにも様相が違うものなんですね。
これまでの出会いの場は、ほとんどが公園の木柵という味気ない場所でしたが、今回は森の木の幹で見つけることができて、ちょっと味のあるスナップ写真が撮れました。
まずは、クロオビフユナミシャクの♂を木の幹で発見。近づいてみると、すぐ近くに♀もいました。♂♀が木の幹で同時に写真に写っているなんて、冬の虫風景としてはこの上ないシーンです。
♀は羽が短くて飛べないので、最初に♀が木に登り、そのフェロモンの色香にクラクラとした♂が引き寄せられたものと思われます。♂がいなかったら、目立たない♀をみつけることはできなかったでしょう。
同じ木には、もう1匹♂がいたので、恋の三角関係が展開されていたのでしょう。深夜の修羅場に立ち会いたかったものです。
この付近はクロオビフユナミシャクの発展場のようで、10メートルほどの範囲の中に10匹以上の♂が確認できました。
♀もあと2匹、木柵で発見。
フユシャク♂のたまり場である公園のトイレには、イチモンジフユナミシャクの姿もありました。
そして、今回はチャバネフユエダシャクには会えずじまいかと半分諦めかけて、東屋で水筒の熱いお茶など飲んでくつろいでいた時のことです。何と、何と、その東屋の中にあの神々しいお姿が。
最初は鳥のフンのように見えたのですが、鳥のフンへの擬態と言えば、チャバネフユエダシャクの♀、ホルスタイン様の得意技です。
老眼と乱視の眼鏡の度がすこし合わなくなってきているので、半信半疑で近寄ってみると、おお、まさしくホルスタイン様。
何という強運。これまではあまり立ち寄ることのなかった東屋だったのですが、体力低下で休憩時間が長くなった昨今、休める場所があるとつい立ち寄るのが癖になってきていたのです。「絵もない、花もない、そんな居酒屋で~♬」演歌のデュエットの定番曲「居酒屋」の歌詞がふと頭に浮かんでくるような、そんなさびしい東屋で、ふくよかなホルスタイン熟女に出会ってしまう。これこそまさに虫記者の昆虫愛の力ですね。
しかし、ホルスタイン様がこんなところに長居しては、誰か別の人が休憩に来て、壁に寄りかかった際に、圧死してしまうかもしれません。
ここは虫記者の名にかけても、救出しなければなりません。そっと指乗せして、近くの木の幹に移してさしあげました。
そして帰り道。さきほどのクロオビフユナミシャク銀座で、もう一度丹念に探してみると、チャバネフユエダシャクの♂にも出会うことができました。
これで♂♀そろってめでたし、めでたし。今年もいい年になりそうな予感です。