虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

小野路のタマムシ。多摩センターから小野路への行き方解説付き

 多摩センター駅周辺の虫歩き、今回は小野路です。以前はいつも車で行っていたのですが、貧しさに負けて自家用車を廃車にしたので、もう行けないと思っていました。しかし、東京の交通網を甘く見てはいけませんね。多摩センターからバスで簡単に行けることが今回判明しました。

 時期は8月だったので、伐採木置き場にタマムシが何匹か来ていました。珍しい虫ではないけれど(都心にもたくさんいます)やっぱりタマムシに会えるとウキウキしてしまうのはなぜでしょう。汗まみれの夏の虫撮りの苦痛を吹き飛ばす、一服の清涼剤のようですね。

 材に来ているタマムシは産卵に夢中で、簡単には逃げないので、撮影には最適です。

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産卵中のヤマトタマムシ。産卵中は逃げられる可能性が低いので、じっくり撮影できます。

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タマムシがいたのはこんな伐採木置き場。手に乗せたらすぐに飛んでいってしまいました。

 車にひかれて成仏したタマムシもいました。無残な轢死体となってもなお美しいタマムシです。

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車に轢かれてもなお美しいタマムシ

 車のない昆虫記者のような貧乏人のために、今回は公共交通機関での小野路への行き方を解説しておきます。東京の虫好きは是非行くべき場所です。虫好きでなくとも、里山の自然を満喫できるので、是非行くべきです。絶対に三密にならない、静かな散策が楽しめます。ディズニーランドなんかよりずっと楽しい(個人の感想です)と思います。

 

 京王、小田急多摩モノレールが来ている便利な多摩センター駅を出たら、駅前のバスターミナルで7番の乗り場に並び、鶴牧団地循環のバスに乗ります。10分に1本ぐらい出ている便利なバスです。

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多摩センター駅バスターミナルの7番乗り場

 バスに乗ったら、7つ目のバス停「南野3丁目」で下車。バス停の隣にある陸橋で、大通りの反対側へ移動。そのまま真っすぐ住宅街を2,3分歩くと、突き当りの右手にもう「よこやまの道」の緑が見えます。

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南野3丁目で降りたら、この陸橋を渡る

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すぐに「よこやまの道」に出る

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よこやまの道、唐木田方面の眺め。こちらには行きません。

 唐木田駅方面には行かず、一本杉公園方面へ片側が住宅街の坂道を上ります。

 

 坂を上り切ったあたりの分かれ道を右へ。分岐点近くにまた「よこやまの道」の表示があります。親切ですね。

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坂を上り切ったあたりの分岐点にも、よこやまの道の案内表示

 中坂公園を過ぎて、南野2丁目のバス停(このバスは本数が少ない)に出たら、ここでよこやまの道を離れて、バス通りの坂道を少し下ります。

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現在地表示のところから、東順路には進まず、写真下側へバス通りを少し下る

 すると右手に「日本総合産業入口」という道が出てきます。これが小野路の入り口なのですが、「小野路入口」とは書いていないので注意が必要です。

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下り坂の進行方向右手の道が小野路への入り口

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日本総合産業の看板が目印

 間違えてさらに坂を下ってしまうと、進行方向右側に浅間神社への参道(草ぼうぼうでゲートで封鎖されている感じですが、徒歩なら登れます)があるので、ここからも小野路に行けます。ただし、坂を下ってしまった分、登りがきつくなります。私も最初は間違えてここまで来て、参道を登りました。きつかった。

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間違えてさらに下ってしまうと、右手に浅間神社の参道入口が出てくる

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この参道の上りは、足腰の弱い昆虫記者にはきつい

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参道からの道(左)と日本総合産業入口からの道(右)の合流点

 今回の小野路散策は、奈良ばい谷戸に寄った後、小野路城跡、小野井戸にたどり着いたところで、引き返しました。

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奈良ばい谷戸への分岐点の表示

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奈良ばい谷戸はこんな感じ。まさに里山の風景ですね。この先、大通りを渡ると小山田緑地へ行けます。

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小野小町が病を治したという小野井戸

 小野路のその他の虫は、次回のお楽しみということで。

派手な柄物ストッキングが自慢のマダラアシゾウムシ

 前回紹介した長池公園にも続いている「よこやまの道」は、果てしなく長いので、昆虫記者の体力では歩き切るのは不可能。長池公園と小山田の道、小野路など昆虫の穴場間の移動経路として利用するのがいいと思います。

 

 そんな移動の途中にも、意外な収穫があったりするのが、虫撮りの醍醐味ですね。よこやまの道の今夏の最大の収穫は、マダラアシゾウムシの集団でした。

 

 派手な柄物ストッキングをはいた女性がいると、目が釘付けになるものですが、このマダラアシゾウムシの迷彩柄ストッキングも、負けず劣らず見事です。

 

 写真を撮る角度によっては、一見何が何だか分からない画像になってしまいます。

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なんじゃこりゃ系のマダラアシゾウムシ。派手な柄物ストッキングが自慢

 このマダラアシゾウムシは、ヌルデという木に多いと聞いていたのですが、これまでは木道上やクヌギの樹液などでの、偶然に近い出会いばかりでした。それが今回、まさにヌルデで大量に発見。カップルのマダラアシゾウムシが多くて、柄物ストッキングを共通項にした、変な趣向のお見合い会場のようでした。

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ヌルデの木で交尾中のマダラアシゾウムシ。ゴツゴツした樹皮の上では柄物ストッキングも目立たなくなる

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このヌルデの木にはマダラアシゾウムシが10匹以上集まっていた

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きちんとした姿勢だと、ゾウムシだと分かる

 よこやまの道から、ちょっと観光気分で鶴見川源流の泉を攻略。

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わざわざ見に行くほどのものでもない鶴見川源流の泉

 その途中の道で、シロオビトリノフンダマシを見つけました。これも一見、何が何だか分からない系の生物ですが、クモの仲間です。その名の通り、鳥の糞に擬態しているらしいです。歩き出すと、クモの正体が明らかになります。

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静止していると正体不明のシロオビトリノフンダマシ

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動き出すとクモの正体がばれるシロオビトリノフンダマシ

 

 ニンジン畑には、当然キアゲハの幼虫。

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ニンジン畑と言えば、キアゲハ幼虫

 

 ヒルガオの葉には当然、ピカピカのジンガサハムシ。

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金色に輝くジンガサハムシはヒルガオの常連

 しかし、ここでも、ジンガサハムシより、ずっと大型のヨツモンカメノコハムシの方が多くなっていました。ヨツモンカメノコハムシは、もともと日本では琉球列島あたりにしかいなかった南方系のハムシですが、温暖化の影響なのか、どんどん北上を続けています。去年は神奈川県で見つけ、今年はついに東京進出の証拠をつかんでしまいました。大型なので、サツマイモなどへの被害が懸念されますね。昆虫記者的には、サツマイモの被害と同時に、金色に輝くジンガサハムシが、ヨツモンとの競争に敗れて数を減らすことが心配です。

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ジンガサハムシを駆逐する勢いの南方の虫、ヨツモンカメノコハムシ

 「よこやまの道」のついでに、唐木田駅からすぐの「からきだの道」も紹介します。ゴルフ場と住宅街に挟まれた散策路なので、虫の姿は少ないですが、花が多く、比較的平坦で歩きやすいので、「虫なんかどうでもいい」というハイカーの方々にはお勧めです。

 

 それでも虫を探すのが昆虫記者。からきだの道では、たくさんのアカハナカミキリが歩道脇の木の杭の上で、恋のバトルを繰り広げていました。

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アカハナカミキリがまず1匹

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メスの匂いを嗅ぎつけてオスがやってきました

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メスに飛びかかるアカハナカミキリのオス

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すぐさま交尾

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そこへ、横恋慕を押しに別のオスが

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あちこちの杭の上で恋の花が咲いていました

 虫は少ないものの、ただの散策路としてはなかなかいい感じの「からきだの道」

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アジサイの季節の「からきだの道」の東屋

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 そして唐木田駅には、行き帰りにいつも昆虫記者を出迎えてくれる美少女がいます。

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長池公園のルリボシカミキリ。命の星、地球に生まれて良かったと思う瞬間

 最低気温も20度を切り、めっきり秋らしくなってきましたが、真夏のネタが山ほど残っていて、何とか消化しないといけません。「別にいいじゃん、放っておけば」と言う人もいるでしょうが、そうはいかない事情が虫撮り好きにはあるのです。いつ、どこで、どんな虫の写真を撮ったのか、認知症気味の昆虫記者はすぐに忘れてしまうのです。そこで役立つのがこういうブログ。虫の名前で簡単に検索できるというのは、非常にありがたいことです。

 加えて、死蔵してしまうのはもったいない、きれいな虫、カッコイイ虫が、夏場は多いのです。そんな虫を見ると「ああ、地球に生まれて良かった。生きてて良かった」としみじみ思いませんか(山ほど反論があるでしょうが、全く気にしません)。

 

 多摩センター駅周辺の散策、今回は長池公園です。悔しかったのは、飛んでいたタマムシがどこかに止まるのを待って写真を撮ろうとしていたら、虫捕り親子がやってきて、あっさりと網で捕まえてしまったことでした。「虫捕り組」と、「虫撮り組」の間には、しばしばこうした火花を散らす戦いが繰り広げられます。

 

 そんな悔しさを晴らしてくれたのが、ルリボシカミキリでした。生物学者福岡伸一博士の名著「ルリボシカミキリの青」で有名な、あの神秘的な深い青色を目にすると「人生って何て素晴らしいんだろう」と思いますよね(全然思わないという人も多いでしょうが、全く気にしません)。

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福岡伸一博士の「ルリボシカミキリの青」で有名なルリボシカミキリ

 カミキリ虫ではほかに、ヤハズカミキリ、キスジトラカミキリがいました。ヤハズカミキリは折れて枯れかかった枝に飛んで来たところを目ざとく見つけました。こういうまだ葉が付いている枯れかけの枝が好みらしいです。ヤハズの名は矢に弓弦を掛けるⅤ字型の部分「矢筈」から取られたもの。鞘翅の後端が矢筈のような形になっているが分かるでしょうか。

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羽の後端が矢筈状になっているヤハズカミキリ

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枯れかけた枝に飛んで来たヤハズカミキリ

 

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キスジトラカミキリ

 長池公園に来ると、毎回お目にかかる蝶がゴイシシジミです。他の公園では、滅多に出会わないので、長池名物と言ってもいいでしょう。ゴイシの名は一目瞭然。羽の模様が碁石を並べたみたいだからでしょう。

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長池公園名物のゴイシシジミ

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碁石を並べたような模様でゴイシシジミ。覚えやすい名前です

 そして、ススキの葉の上には、超小型のエビ煎餅のような姿のエビイロカメムシの幼虫。成虫は非常に地味なのですが、幼虫は小さければ小さいほど、かわいい。エビ煎餅だと思ってたべてしまいたいぐらいです(嘘つき!という批判が聞こえますが、嘘です。食べたくはないです)。

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小さいほど可愛い、エビ煎餅のようなエビイロカメムシ幼虫

 長池公園に行くのは、車があれば簡単なのですが、電車だと駅からかなり遠くて大変です。ですが、昆虫記者は唐木田駅から「よこやまの道」という、虫の多い散策路(結構長距離)を通って行くので、苦になりません。

 

 公園に「よこやまの道」からの地図があったので、紹介しておきます。こんな経路で長池公園に行く人は、100人に1人どころか、1000人に1人もいないと思うので、普通の人(常識のある人のことです)は誰も、そんなまねはしませんね。

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唐木田駅からは徒歩10分ほどで、よこやまの道に入れます

 上の地図にある長池上山田陸橋を渡る頃には、雨が降ってきて、カタツムリがのんびりと陸橋を渡っていました。この陸橋は、ほとんど長池公園とよこやまの道をつなぐ専用道路のようなものなので、人通りがほとんどありません。なので、カタツムリも悠々と行進していたのでしょう。

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陸橋の上をのんびり行進するカタツムリ

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長池公園には田んぼもあります

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池の周囲に咲いていたヤブカンゾウ

 細い枝にびっしりと張り付いていたタンポポの種のようなものは、何だか分かりますか。これも虫です。

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これ、何の虫か分かりますか。

 正体はベッコウハゴロモの幼虫でした。まさに芸術ですね(反論は受け付けません)。

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横から見ると、虫と分かるベッコウハゴロモの幼虫

 

絶滅していなかった東京のアカマダラハナムグリ

 今回は少し虫に詳しい人以外には、どうでもいい話かもしれません。話題は「絶滅していなかった東京のアカマダラハナムグリアカマダラコガネ)」です。東京・町田市の某所にてクヌギの樹液で見つけました。東京では絶滅種扱いのようなので、生存が確認されて「大はしゃぎ」するのは、一般社会から隔絶されたごく一部の虫好き都民(昆虫記者を含む)だけでしょう。

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絶滅していなかった東京のアカマダラハナムグリ

 さしてきれいでもなく、さして大きくもなく、目立たない虫なので、カブト、クワガタ、タマムシなど一般に人気の虫を探している男の子なんかだと、見逃してしまう虫かもしれませんね。

 

 実際、恥ずかしながら昆虫記者も、アカマダラハナムグリアカマダラコガネの方が一般的呼び名ですが、正式にはハナムグリ系のようです)を視界の端に捉えながらも、「なんか薄汚れたハナムグリがいるな」ぐらいに思って、近くにいたクワガタを先に撮影していたくらいです。まさに昆虫記者の名折れですね。

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樹液を吸う姿は全く目立たないアカマダラハナムグリ

 コアオハナムグリの褐色型を少し大きくして、泥をこびり付かせたら、こんな感じになるのではないかと思わせる色模様でした。

 

 しかし、小楯板(背中の固い羽をつないでいる蝶番のような部分です)に特徴的な「矢印」のような模様。これはアカマダラに相違ありません。

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小楯板に特徴的な矢印模様があるアカマダラハナムグリ

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アカマダラハナムグリの全体はこんな感じ。手に乗せるとそこそこの見栄え

 以前に「バカの壁」などの著書で有名な解剖学者の養老孟子さんに、箱根で見つけたアサカミキリの写真を見せた際に、各地で絶滅が危惧されているので、詳しい生息場所は明らかにしない方がいいと忠告されたことがあるので、今回も詳しい場所は紹介しません。でも町田ですから、山奥ということではなくて、近くに家並みが見える普通の雑木林でした。

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 幼虫が猛禽類の巣の中で育つことが多いとのことなので、町田市の丘陵地帯、里山地帯は多くの猛禽類の生息地としても、貴重な場所なのかも。町田に残された自然を守ることの必要性を訴える一助になれば、うっかり昆虫記者に発見されてしまったアカマダラハナムグリとしても、鼻が高いことでしょう。

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このあと飛び去っていったアカマダラハナムグリ。東京にとどまってほしい。

 貴重な生物なので、もちろん標本になどしていません。写真を撮った後は、指先から飛び去るにまかせて逃がしてやりました。

小山田の人相の悪い虫たち

 東京町田市の小山田緑地編、最後は暑くて死にそうだった8月です。

 

 人相の悪いウスバカミキリが木の洞に潜んでいました。昼間に見かけるウスバカミキリはいつもこういう洞にいます。今回のは浅い洞でしたが、大抵はもっと深い洞にいます。シロスジカミキリが羽化した後のような小さな穴に潜っていることもありました。暗い性格のカミキリのようです。

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ウスバカミキリは昼間はこんな洞の中にいる

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人相の悪いウスバカミキリ

 ウスバカミキリよりもっと人相が悪いのは、クロフヒゲナガゾウムシ。

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本当に悪そうな顔のクロフヒゲナガゾウムシ

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背中の模様は結構オシャレなクロフヒゲナガゾウムシ

 ノコギリクワガタは歴戦の勇士というか、つわものどもの夢の後というか、戦に敗れた敗残兵のような傷だらけの♂を見つけました。夏の終わりを感じさせまね。

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歴戦のつわもの。傷だらけのノコギリクワガタ

 カブトムシは死骸ばかり。夏の終わりは悲しいものです。

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 秋が近づくと、愛のぬくもりが欲しくなりますね。そんなぬくもりを人間界に期待できない昆虫記者は、虫のカップルを眺めて心を癒します。

 

 エゴ(ウシズラ)ヒゲナガゾウムシのカップルも、そんな癒し系ですね。ウシ面の♂とウマ面の♀でも、ちゃんとカップルになれる。割れ鍋に綴じ蓋的な夫婦関係もいいものです。

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エゴヒゲナガゾウムシのカップ

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下のウマ面が♀、上のウシ面が♂


 羽の短いバッタが交尾していました。未成年者(幼虫)の不純な異性行為のようにも見えますが、これで立派な成虫です。フキバッタの仲間は成虫になっても羽が短くて、幼虫のように見えます。

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フキバッタの仲間は成虫でも短い羽。未成年(幼虫)が悪さをしているわけではありません。

 カブクワなど大物が姿を消すと、虫撮りもイモムシ探しがメインになりますね。今回はカギバガ系を2匹見つけました。

 

 まずはアシベニカギバ。何と気付いたらカメラバッグの上にいました。昆虫記者が虫に好かれている証拠?。

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アシベニカギバ(たぶん)の幼虫

 こちらもカギバガ系(未同定)です。

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 6月には弱弱しかった稲も、夏らしく立派に成長していました。 

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 前回紹介したアサザ池から斜面の散策路を登ると、つり橋があって、ちょっと冒険気分になれます。

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小山田緑地のつり橋

 

杖を持つお爺さんと杖のようなナナフシのコラボ

 東京・町田市の小山田緑地編、まだしつこく続きます。まずは風景と人物と虫を組み合わせた苦心の作から。題名は「杖を持つおじいさんと、杖のようなナナフシ」。これはもう、昆虫記者、昆虫写真家というより、昆虫詩人(誰が?)ですね。やらせでも何でもない、一期一会のシャッターチャンス、などというほどのことはありません。お爺さんも、ナナフシも、全く動かないですから、その気になれば誰でも(誰もその気にならない)撮れる写真ですね。

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杖を持つお爺さんと、杖のようなナナフシ。絶妙の取り合わせですね。

 小山田緑地へと通じる小山田の道は、夏は暑くてたまらないので、ちょっと水辺に寄ります。田んぼ脇の道をしばらく行くと、アサザ池というきれいな湧き水の池があります。お弁当を食べるならここがいいです。

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涼しさを誘うアサザ

 水面に浮かぶアサザの葉が清涼感を誘います、などと詩人を気取りながら葉の上を眺めていると、葉上にたくさんのハムシが群れているのが目に留まりました。交尾に忙しい、イネネクイハムシ(たぶん)です。弁当を食べている最中でも虫を撮る。これぞまさにプロ(誰もプロとして認めていない)ですね。

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アサザの葉上にはたくさんのイネネクイハムシ

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交尾に忙しいイネネクイハムシ

 そして汚い鳥の糞。に見えますが、ゾウムシの仲間のようです。鳥の糞に似たゾウムシと言えば、クズにいるオジロアシナガゾウムシが有名ですが、今回のはもっと細長くて、もっと鳥の糞に似ているホソアナアキゾウムシでした。

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汚い鳥の糞、ではなくて

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ホソアナアキゾウムシのようです

 小山田緑地クヌギの樹液には、コクワガタに似た地味なクワガタのカップルがいました。スジクワガタです。都心はコクワガタ天国で、スジクワガタはめったにいないのですが、ちょっと郊外、ちょっと山っぽいところに行くと、スジクワガタの方が優勢になる感じですね。

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スジクワガタのカップ

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山地ではコクワガタより多い感じのスジクワガタ


 でもコクワガタとの見分けは、ちょっと微妙。メスは背中(鞘翅)の筋が目立つのでコクワでないと分かります。オスは牙(大顎)の中ほどの歯が二股、ないし台形になっているのがスジクワガタで、尖った一本歯がコクワです。でも小型になると、この歯が目立たなくなるので、ほとんど見分けがつきません。

 

 なんて、言葉で言うより、写真で見た方が簡単ですね。

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スジクワガタ♂の大顎

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これがコクワガタの♂。大顎の歯に注目。

 今回の出演者は地味系ばかりだったので、最後はちょっとおしゃれ系のゴマダラオトシブミで締めます。クヌギやクリの葉を巻くオトシブミですが、巻き方が他のオトシブミよりずっと下手なので、すぐに分かります。あっ、でも巻いた葉の写真を撮るのを忘れました。来年はしっかり撮ります。

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オシャレ系のゴマダラオトシブミ

 

ポンポンを脚に付けたチアガール風のモモブトスカシバ

 多摩ニュータウン付近の昆虫散策路シリーズ再開です。東京都外への旅行自粛で、今年は多摩センター駅を中心に多摩市、町田市、八王子市を徹底攻略することに。攻略と言うとカッコイイですが、実態は、都内引きこもり型の苦渋の選択ですね。

 それでも、悪い事ばかりではありません(そう思わないとやってられない)。都心からすぐのところに、まだこんな里山的自然がたくさん残っていることに気付いただけでも収穫です。

 今回は小山田の道から小山田緑地の続編。リョウブ(だと思う)の花に集まる虫から紹介します。

 いつものハナムグリ系が群れ飛ぶ中に、モモブトスカシバの姿が。蛾の中には後ろ足をチアガール風に飾り立てているのが何種かいますが、このモモブトスカシバは、その中でも1、2を争う過剰装飾系ですね。

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チアガールのポンポンを脚に付けたようなモモブトスカシバ

 チアガールが手に持つポンポン(pompon)を後ろ足にたくさん付けているような姿ですが、別に誰を応援しているわけでもないようです。モモブトスカシバを見て、チアガールを思い浮かべるというのは「まぎれもなく欲求不満の証拠だ」と精神分析する人もいるでしょうが、そんなことはありません。チアガールは、世のすべての男性の永遠の憧れの対象なのです。

 モモブトのポンポンはややトゲトゲしていて、チクチクと痛そうなので、ファンを引き付けるよりは、外敵に攻撃をためらわせる効果があるかもしれませんね。

 ただ、飛んでいる時は、かなり邪魔そうでした。

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飛ぶ時は脚のポンポンが邪魔そうなモモブトスカシバ

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 リョウブの花のその他の訪問者は、つまらない姿のいつもの顔触れですが、容姿差別をしてはいけないので、一応紹介しておきましょう。

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アオハナムグリ

 

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クロハナムグリ

 

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ヒメトラハナムグリ

 

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キイロトラカミミリ

 コアオハナムグリもたくさんリョウブに来ていたのですが、あまりきれいな絵になっていなかったので、コアオはアジサイとのコラボの写真にしました。

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コアオハナムグリアジサイ


 これ、たぶんリョウブの花ですよね。季節は6月末とちょっと早いのですが。

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 田んぼのイネもまだ小さく弱弱しい季節でした。

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