虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑬ブキティマからマレー鉄道跡、セントーサへ

 ブキティマ山のふもとの秘密の小道には、蝶も多かったし、小川にはスッポンもいました。でも、本当は歩いてはいけない危険な道だったのです。

 花に来ているエルナシロサカハチシジミは可愛いですが、実は獣糞など汚いものも大好きです。

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花に来るエルナシロサカハチシジミは可愛いが

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獣糞で吸汁する姿はちょっと引いてしまう

 チャイロタテハ(クルーザー)も吸水に来ていました。

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吸水中のチャイロタテハ

 そして流れの中にはおいしそうなスッポンの姿も。

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シンガポール産の天然物スッポン

 しかし、虫探しを満喫していたその時、騒々しいマウンテンバイクの一団が襲ってきたのです。そこのけ、そこのけとばかりに、全くスピードを落とすことなく、昆虫記者の前後を走り抜けていきます。自転車の暴走族です。か弱い昆虫記者は、身ぐるみはがれて、裸一貫で放り出されるのでしょうか。

 

 しかし、自転車暴走族の連中は、何かの標識を指差して、ぐちゃぐちゃと文句を言っただけで、去っていきました。昆虫記者の気迫に恐れをなしたのでしょうか。

 

 ふと彼らが指差した標識を見ると、何と「ハイキング禁止」と書いてあるではありませんか。ここはマウンテンバイクの専用コースだったのです。こんな素晴らしい昆虫歩道をマウンテンバイク専用にするとは何事でしょう。彼らは鳥や虫や自然には興味がないと思われるので、コースはもっと荒れ果てた場所でいいと思うのですが。

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マウンテンバイク専用の道だった

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ハイキングは禁止

 結局この道は周回コースだったようで、入口に戻ってしまいました。そこからすごい遠回りをして、MRTのキングアルバートパーク駅に着きました。

 

 駅近くの車道の上には鉄橋のような構造物。MRTはここでは地下を走っているはず。ではこの鉄橋は何なのか。実はこのあたりは、以前マレー鉄道が走っていたのです。

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大通りの上には廃線の鉄橋

 鉄道跡地は今はグリーンコリドーという果てしなく長い緑道になっています。

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マレー鉄道跡。一部線路が残っている。

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マレー鉄道の枕木にとまっていたヘリグロホソチョウ

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鉄道跡の緑道がはるかかなたまで続く

 虫も多そうないい緑道なのですが、この日はマウンテンバイク軍団に襲われたりで疲れ切っていたので、MRTでホテルに戻ることに。

 

 列車がホテルのあるテロックブラガに近づいた時、隣のハーバーフロント駅から、有名観光地のセントーサ島へ行こうと思い立ちました。開発が進んだセントーサにはあまり虫はいないでしょう。それなのになぜ行くのか。それは、ここにきれいな白砂のビーチがあるからです。ビーチには水着姿の美女が群れているかもしれません。疲れ切った昆虫記者には、眼の保養が必要なのです。

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セントーサまでの橋を歩いて渡れば無料で入島できるようだ。ムービングウォークはただ。

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一応入島の料金ゲートはあるが、壊れているようで、みんな右端の通路から無料で出入りしている。

 では、お待ちかねの眼の保養をどうぞ。

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セントーサのビーチでくつろぐ乙女たち

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バンジージャンプもできます

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こんな恐ろしい事、昆虫記者は絶対やりません。

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セントーサ島内には、虫のいそうなキャノピーウォークもあります

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虫のいそうな小道もあります。

 でも、眼の保養ばかりしていたので、虫の収穫はゼロ。森の中の小さな滝に鳥が集まっていたのが唯一の収穫でした。

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滝の上にいたアオバト

 

ボルネオの昆虫総まとめ①キナバル山の玄関口、コタキナバル

 ボルネオと言えば、オランウータンやテングザルがいるジャングル。でもキナバル山の玄関口のコタキナバルは結構な都会です。しかし玄関口でさえ、虫がたくさんいる。さすがはボルネオですね。

 ヤフーブログ閉鎖に伴う総まとめ復活作業。今回はコタキナバルとキパンディ編です。その後、キナバル山、キナバタンガン、セピロックと探検隊は進撃していく予定です。

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大きさと美しさを兼ね備えたセミ、タクア・スペキオサ

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コタキナのホテルにいたコキティナヒメイナズマの♀

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ダールマンツヤクワガタ

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キパンディのサソリ

 

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シンガポールの沿線昆虫ガイド⑫シンガポール最高峰ブキティマに火の鳥アカショウビン

 シンガポールの虫旅4日目は、決死の登山。なんて、嘘です。シンガポールに山なんてあるわけないですね。でも、一応現地日本人の間で「山」と呼ばれているのが、最高峰のブキティマ山です。標高はわずか163メートルで、シンガポール人はだれもこれを山とは思っていないでしょう。200メートル以上の高層ビルの多いシンガポールでは、ビルの上から頂上を見下ろせてしまうかも。

 ブキティマのブキは丘の意味なので、実態は小高い丘ですね。では、ブキティマの丘に登ってみましょう。

 MRTダウンタウン線のビューティーワールド駅で降りると、ブキティマまでは歩いて10分ほどです。この駅が出来たのは2015年のこと。それまではブキティマに行くのはバスを乗り継いだりと、非常に面倒でした。交通は便利になったし、自然豊かないいところなので、みなさん是非行きましょう。などと呼びかけても、日本人はほとんど行きません。なぜでしょう。それは、何もないからですね。

 でも、虫はそここそいます。その上今回は、バードウォッチャー憧れの「火の鳥アカショウビンとか、天然物スッポンとか、色々面白いものに出会いました。「何もない」かもしれないけれど、「何か面白いものに会える」かもしれないブキティマです。

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何もないと思っていたブキティマに「火の鳥アカショウビン

 まず、斜めに45度傾いたような、ブキティマ駅出入口の変な形に注目です。駅前の植え込みには、キバラタイヨウチョウというきれいな鳥。さすが南国です。

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斜め45度に傾いたビューティーワールド駅。その先の緑はブキティマだ

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駅前にいたキバラタイヨウチョウ

 ブキティマ山に向かうと、すぐにサルの群れが現れました。

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ブキティマから住宅街に下りてきた猿軍団

 廃線になったマレー鉄道のガードをくぐると、もうブキティマ山入口です。

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青い表示の下をくぐると、間もなくブキティマ山の入口

 まず小さなカマキリを発見。小さな卵嚢はこのカマキリのものかもしれません。

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近付くとすぐに飛んで逃げる小さなカマキリ

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柵のあちこちに付いている小さな卵嚢は前出のカマキリのものかも

 次に現れたのは、アオバハゴロモの巨大版。モンシロチョウぐらいの大きさがありますね。

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アオバハゴロモを大きくしたようなハゴロモの仲間

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飛ぶと、モンシロチョウのように見える

 道は舗装部分が多くて、歩きやすいのですが、健康運動好きの華人たちが、例の後ろ歩きで坂を下りてくるので、衝突事故に注意しましょう。

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エクササイズ好きの華人が何人も、後ろ歩きで山道を降りてくる

 そして、あっという間に頂上。さすがはブキ、丘です。「登頂!」という達成感は全くありません。

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これがシンガポール最高峰の頂上

 遠足みたいなグループも多いです。でも、こんな丘登りでは、子供たちの体力増進にはつながりそうにないですね。

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頂上には遠足みたいなグループも多い

 頂上にはテリを張っている蝶が何種類か。忙しそうに飛び回るコモンタイマイは例によってピンボケに。きれいに撮れたのは、じっとしているコミスジの仲間ぐらいです。

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頂上広場にいたコモンタイマイ

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ミスジの仲間

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オオジョロウグモだろうか。こんなに丸々と太ったのは珍しい

 下りは、左側の脇道のトレイルに入ります。その先には、ちょっと面白いものがあるのです。それは、マレーシアから水を輸入するための巨大水道管。水資源の乏しい島国シンガポールは、毎年大金を払って隣国マレーシアから水を買っているのです。

 

 そんな貴重な水ですから、マレーシアからの水道管は地中にあるか、鉄条網などで厳重に守られている場所が多いのですが、ここだけはなぜか、地上にドドーンと鎮座しているのです。

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マレーシアからシンガポールへ水を運ぶ巨大水道管

 ひやりと冷たい巨大水道管の上に乗って、弁当を食べるのは気持ちのいいものです。しかし、大事な水道管をむき出しにしていていいのでしょうか。テロ攻撃の目標になったりしないのでしょうか。

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巨大水道管の上でくつろぐ昆虫記者

 どこからか突然、テロ対策部隊が現れて「日本人昆虫記者、水道管テロ容疑で逮捕」なんてことになったりしないのでしょうか。ちょっと不安です。

 

 ブキティマ山は、そこそこ人出があるのですが、この水道管のある草原は、見渡す限りだれも歩いていません。なので、ブキティマ山より虫が豊富です。

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目玉模様が自慢のタテハモドキ(ピーコックパンジー

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チョコレートパンジー

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大きなキリギリスの仲間

 タテハモドキなどの蝶を一通り撮ったら、昔通った帰り道を探します。しかし、何ということでしょう。行く手はバリケードでふさがれて、その中では大規模工事が進行中なのでした。この荒れ野のような場所を、小ぎれいな公園にでも作り変えるのでしょうか。荒れ野は荒れ野のままの方が虫が多くていいのですが、一般大衆はそうは思わないでしょう。

 

 工事のせいで、帰り道はふさがれいます。でも工事現場のすぐ脇に、いい感じの林道が口を開いていました。横に小川が流れていて、いかにも虫がいそうな林道です。方向的にも、駅方面に戻れそうです。昆虫記者がそこに吸い込まれたのは当然と言えます。

 

 しばらく林道を進んでいくと、バチャバチャと激しい水音。「もしかして、美女軍団の秘密の水浴場でもあるのか」と期待して、足音を忍ばせて近づきます。すると、そこにいたのは、美女軍団よりも魅力的なバードウォッチャー憧れの「火の鳥アカショウビンでした。

 激しい水音は、アカショウビンが狩りのため、水中に飛び込む音だったのです。アカショウビンは狩りに夢中で、近づいても逃げようとしません。10分ほど、のんびりと狩りの様子を眺めていたのですが、1匹も魚を捕まえることができません。ただ遊んでいるのか、最低の技量のアカショウビンなのかのどちらかでしょう。

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狩りの技量最低のアカショウビン

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何度水中に飛び込んでも

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魚取りに失敗して、また元の枝に戻って来る

 いつまで待っても狩りに成功する気配がないので、見捨てて先に進むことに。しかし、そこで、想定外の襲撃に遭うことになるのですが、長くなったので、今回はこのあたりで打ち切りに。次回に期待をつなぐいい終わり方ですね。

 

マレーシア(半島部)の昆虫総まとめ③思い出のキャメロンハイランド

 ヤフーブログ閉鎖に伴う記事復活総まとめ。今回はマレー半島のキャメロンハイランド。なにせ2012年のことですから、その後開発が進んで今はどうなっていることやら。虫たちの窮状が思いやられます。

 あの頃はまだ、あまりブログに慣れていなかったので、紹介した虫もごくわずかでした。そこで今回は復活記念で、掲載漏れの虫たちに出演機会を提供することに。でもこれから虫探しにキャメロンに行こうという人は、期待しすぎるとがっかりするかも。その後だいぶ虫が減ったらしいという話も耳にしたので。

 

 それではまず、今回貴重な出演機会を得た虫たちです。

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マニアにとっては黄金よりありがたいオウゴンオニクワガタ

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噛まれたら痛そうなセアカフタマタクワガタ

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巨大なオサゾウムシの仲間

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ホテルに飛んで来た水玉模様の大型カミキリ

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擬態の王者コノハムシ。オランアスリが木に登ってとってくれた。

 以下はお目汚しの当時の雑なブログ記事です。

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mushikisya.hatenablog.com この旅でジャングルの中を案内してくれたのは、先住民のオランアスリの人たち。彼らの素朴な暮らしは、うらやましいが、都会の害悪に染まった昆虫記者が馴染めるはずはない。

 以下は、オランアスリの人たちとの思い出の写真です。

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苦もなく木に登って虫をさがしてくれたオランアスリの若者

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オランアスリの村。この先に昆虫天国がある

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ビニール袋の網を持って採集に向かうオランアスリの少女。

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ビニール袋の網で上手に蝶をとる

 

日本最小のスズメガ「ホシヒメホウジャク」は蛾だけどかわいい

 たまに日本の虫。1カ月ほど前に自宅で羽化したホシヒメホウジャクです。大きいと不気味なスズメガの仲間ですが、小さいというだけで可愛く見えますね。日本最小だそうです。

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ホシヒメホウジャク。こんなに小さくてもスズメガの仲間です。日本最小です。

 幼虫はホシホウジャクと同じヘクソカズラを食べます。でも、ヘクソカズラでみつかるのはいつもホシホウジャクの幼虫ばかりで、ホシヒメホウジャクを見つけたのは、今回を含めてわずか2回だけです。

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川崎市で見つけたホシヒメホウジャク幼虫。前回見つけたのは浜離宮でした。

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幼虫はこれがほぼ最大サイズ。成虫が小さいので、当然幼虫も小さいです。

 成虫を見たのは、ホシホウジャク1000回に対してホシヒメホウジャク1回くらいの割合でしょうか。

 ホシホウジャクは嫌になるほどいますから、虫撮りに出かけると1日に2、3回は見かけます。なので、ホシヒメホウジャクを見つけると、すごい幸運のような気がするのです。幼虫は金箔を張ったような模様で、おめでたい印象だし。

 

 ヘクソカズラの葉を丸めて蛹室を作ります。

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ホシヒメホウジャクの蛹室

 蛹室の中の蛹はこんなです。

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ホシヒメホウジャクの蛹


 そして羽化。

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小さくて愛おしいですね。

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極小のホシヒメホウジャクですが、大写しにするとホークモスの精悍な姿に。

 羽がちょっと凸凹の変わった形をしています。裏から見るとよく分かりますね。枯れ葉っぽく見せるためでしょうか。

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裏から見ると、凸凹の羽の形が面白い。

 こんなに小さくてもスズメガ。それだけで可愛いと思えるから不思議です。子犬も子猫も可愛いですよね。体重100キロ近くある子象でさえ、親象より小さいというだけで可愛く思えるます。小さくて弱い者が生き残るには、きっと、この可愛さで獲得する愛情が不可欠なのでしょう。

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑪シンガポール動物園のオープン・コンセプトって何?

 シンガポール旅3日目は、オープン・コンセプトの先駆けとして世界的に有名なあのシンガポールZOO、シンガポール動物園です。昆虫記者のために無料開放されるからオープンなのではありません(結構料金高いです)。檻をなくして、動物が暮らしやすい自然に近い環境を作り、見る人も動物たちと同じ環境にいるかのように感じさせるのが、オープン・コンセプトなのです。

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ワオキツネザルが目の前に現れるオープン・コンセプトのすごさ

 しかしなぜ、昆虫記者が動物園に行くのか。そんな冷酷な質問を浴びせてはいけません。昆虫記者にも休息は必要なのです。虫撮りを頑張りすぎて過労で倒れたとしても、絶対に労災扱いにはなりません。誰も同情してくれません。家族からも、家事をおろそかにした天罰だと言われるだけです。そんなわけで、動物園がいちばん空いていてのんびりできる月曜に、虫撮りの激務でボロボロになった心身をいやすため、シンガポール動物園で人並みの休暇気分を味わうことにしたのです。

 シンガポール動物園で一番のお勧め(個人の感想です)は、フラジャイル・フォレストです。ここはオープン・コンセプトの極みなのです。

 ここは湖(アッパー・セレター・リザバーという貯水池)に囲まれた出島のようなジャングル地帯。湖の向こう側にはセントラルキャッチメントという自然保護区が広がるので、動物園自体ジャングルの中にある感じがして、探検家の気分になれるのですが、フラジャイル・フォレストではさらに、動物と人間が全く同じ空間を共有することができます。

 広さ1500平方メートル、高さ15メートルのドーム内には、熱帯雨林の環境が再現されており、オオコオモリ、ナマケモノワオキツネザル、マメジカ、色鮮やかな鳥類が生活しています。それを外から見るのではなく、人間が熱帯雨林に分け入っていくのです。もし猛獣がいたら、人間は「飛んで火にいる夏の虫」。あっという間に食い殺されてしまうでしょう。

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フラジャイル・フォレストで上空を見上げると、オオコウモリがぶら下がっている

 なので、もちろん猛獣はいません(昆虫記者の見た限りでは)。いくらオープン・コンセプトの動物園でも、そこまではやりません(たぶん)。

 ここで一番大きな顔をしているのは、オオコオモリです。入園者の頭の上をビュンビュン飛び回っています。でも吸血コウモリではない(たぶん)ので、ご安心下さい。オオコウモリは果実や花を食べる菜食主義者なのです。でもカラスぐらいの大きさなので、見た目は怖いです。とはいえ、普通の夜行性コウモリの悪魔の使いのような顔と比べると、不気味さはマイルドです。

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観光客の頭上をかすめ飛ぶオオコウモリ。カラスぐらい大きい。

 オオコオモリは、視覚に頼って飛ぶので、目が大きく、耳はあまり大きくありません。それで、キツネのような顔になり、フライング・フォックスとも呼ばれています。空飛ぶキツネと思えば、かわいいですね。

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 マダガスカルのひょうきん者、ワオキツネザルも、ピョンピョン跳ね回っています。ただし、そんな姿が見られるのは、人が少ない平日の早い時間帯だけ。フラジャイル・フォレストを満喫するには、月曜の朝一番を狙いましょう。

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ワーオ、ワオキツネザルと目が合った

 よく探すと、どこかにナマケモノもいます。ナメクジが這うようなペースでしか動かないので、気付きにくいですが、どこかにいます。

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ほとんど動かないナマケモノ

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ほとんど眠っているようなナマケモノ

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子猫ぐらいのマメジカもかわいい

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オオハシは餌をもらいにくる

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立派なタテガミのカンムリバト

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人目を気にせず口づけを交わすインコ

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ピーコックフェザントが目の前を歩く


 2番目のお勧めは、爬虫類館です。何がいいかと言うと、冷房が効いていることです。シンガポールは熱帯ですから、時々こういう冷房の効いた施設に入りながら、過ごすのがいいでしょう。カメレオンとか、エリマキトカゲとか、見ものも多いです。毒々しい青色のヤドクガエルも見逃さないように。

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毒々しいヤドクガエル

 それ以外の動物は、スター級のものだけに限らないと、時間が足りなくなります。ここのスターと言えば、ホワイトタイガーとオランウータンですね。

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密林の王者ホワイトタイガー

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食堂前にスター級のスペースを与えられているオランウータン

 周囲がジャングルなので、野鳥や野生動物も、勝手に入り込んでいます。タマリンなどの園内に放し飼いの動物と、不法侵入者との区別があいまいですね。

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放し飼いのコットントップ・タマリンと不法侵入者のカニクイザル

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コモドドラゴン(上)と不法侵入者のミズオオトカゲ

 シンガポール動物園の唯一の欠点は、金欠の昆虫記者にとっては入園料が高いこと(これだけの施設ですから、富裕な人々は文句を言ってはいけません。もちろん言わないでしょうが)。何と35S(シンガポール)ドルもします。1Sドル=80円として、2800円にもなります。シンガポール滞在中に入る唯一の有料観光施設ですから、清水の舞台から飛び降りるつもりで払いました。なので、動物園までの交通費は極力節約しなければなりません。タクシー利用などもってのほか(今回の旅行では一度もタクシーを利用していません)です。

 そこで、貧乏人には嬉しい秘密情報をお伝えします。MRTノースサウスラインのカティブ駅からマンダイ・シャトルという動物園への直通バスが出ていて、料金は片道たったの1Sドルとバカ安なのです。もちろん、全然秘密のルードではないのですが、面倒なので日本人はあまり利用していないアクセスです。

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料金たったの1Sドルの動物園行きバス

 バスは20分に一本出ていて、所要時間は約15分。動物の絵柄があるバスが駅前(改札を出て左端)に到着するのですぐ分かります。分からなければ、駅員に「ズー」とか「バス」とか言えば教えてくれます。ただし現金は受け付けないのですべての公共交通で使える電子マネーEZ-linkカードが必要です。

 

 

◎マレーシア(半島部)の昆虫総まとめ②昆虫記者の原点編

 ヤフーブログ閉鎖に伴う過去記事総まとめ。今回はマレーシア半島部の高原、フレーザーズヒル編です。ここは昆虫記者がシンガポール特派員時代に、ある昆虫教室の取材で訪れて、テナガコガネ、コーカサスオオカブト、テイオウゼミなど巨大昆虫との出会いに感動して、幼少期の昆虫愛が再燃した場所です。昆虫記者の原点とも言える場所なのです。

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アカエリトリバネアゲハはワシントン条約の保護対象。捕まえたりしないように。

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コーカサスオオカブトはアジア最大のカブト虫

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テイオウゼミは世界最大のセミ

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以前の昆虫教室で特別な許可を得て採集したテナガコガネ

 半島部の高原の中で虫好きの間で一番有名なのは、キャメロンハイランドでしょう。でもキャメロンは茶畑、苺畑、ホテルなどの大規模な開発が進み過ぎて、以前ほどの昆虫天国ではなくなってしまいました。その点マイナーなフレーザーズヒルは、保護が徹底しているので、乱開発がなく、依然として昆虫天国が広がっています(今もそうであることを願います)。

 それでは、フレーザーズヒルの昆虫天国に突入しましょう。

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